12気筒をミッドシップに積んだゴルフって正気か! マジメなVWがここまでふざけた「怪物ゴルフ」は走らせることすら困難なシロモノだった (2/2ページ)

あまりのパワーにまともに運転できる人がいないほどのじゃじゃ馬

「だったらミッドシップにしちゃえ! フェートンの駆動系だったらいけるだろ」ピエヒ会長がこういったかはわかりませんが、まんまとW12気筒エンジンは後席を省いて車内ミッドへと搭載されることに。しかも、同じくW12を積んでいたベントレー・コンチネンタル・フライングスパー同様にツインターボ化されるというゴリ押しぶり。エンジニアの悪ふざけ、というか暴挙に等しい魔改造かと。

 結局、650馬力/750Nmとベース車両の3倍近いパワーをゲット。ですが、パワーだけありあまっていてもクルマはまともに走りません。W12ゴルフは車幅がおよそ16cm拡幅されて全幅1880mmとされたものの、ホイールベースはそのまんま。ワイド&ローなどと評されてはいますが、650馬力のディメンジョンとしては不適格にもほどがあるというもの。ご覧になった方もいるかと思いますが、イギリスのテレビ番組ではスピンしまくり、とても素人の手に負えるクルマではありませんでした。

 とはいえ、走行性能はともかく、ふくよかに膨らまされた前後のフェンダーや、リヤウイングの代わりに設けられたNACAダクト的な導風口、あるいはサイドにあけられた大きなダクトなど、ボディワークはロジックだけでなくゴルフに独特な迫力を加えています。

 また、室内に鎮座するW12エンジン周辺もカーボンで作られたガイドパイプやフレームワークなど、美しい仕上がりはさすがメーカーの仕事ぶり。足まわりのチューニングも的確で、フロントブレーキはアウディRS4、リヤはランボルギーニ・ガヤルドで使用しているブレンボの削り出しコンポーネント。GTIと同じデザインが用いられたホイールは19インチへと拡大され、F235/R295というファットなタイヤを装着しています。

 それでもスピンしまくり(笑)。過給圧やらデフセットやら、なにをどういじっても650馬力はオーバーパワーだったということで、ついに市販されないどころか、テストカーは1台だけしか作られることはありませんでした。ちなみに、これでフェートンの評判が上がったのか、ディスコン予定だったのが2016年まで延命されています。

 いずれにしろ、同社の看板商品を魔改造しちゃうフォルクスワーゲンの心意気は記憶にとどめるべきでしょう。面白くないメーカーといわれた際に、ぐうの音も出ないほど反論するにはゴルフW12は絶好のネタなのですから。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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