【試乗】次なるBYDの一手は日本でも人気のクーペSUV! 「シーライオン7」は静粛性とコンフォート性がスゴイ!! (2/2ページ)

官能度は低いが総合的な完成度は高い

シャシーとハンドリング

 シャシーには、フロントにダブルウイッシュボーン式、リヤにマルチリンク式のサスペンションを採用し、FSD(Frequency Selective Damping)ショックアブソーバーと組み合わせることで、快適性と運動性能の両立を図っている。フロントサスペンションアームにはアルミが多用されていて、見た目の作り込みも精度を増したようだ。

 今回は、クローズドコースで限界特性も試せたが、サスペンションがややソフトすぎる印象を受けた。とくにコーナリング時には車体のロールが大きく感じられる。一般道での実用速度では快適で、申し分ない。

 シーライオン7は、パワーステアリングをダブルピニオンで仕立てており、操舵フィールも優れている。ただ、シールの操縦性、操舵フィールが非常に優秀だったので、シールには及ばない印象を受けた。

 高速スラロームではリヤのリバースが早く、リバウンドストロークの不足感があるが、乗員が増えると解消されるレベル。その際にはアンダーステアが露見しそうだ。コーナリング特性を制御するブレーキベクタリングなどは危険回避制御しか盛り込まれていないようだった。

乗り心地と静粛性

 乗り心地は快適だ。とくに静粛性の高さには目をみはるものがある。EVゆえパワートレインが静かなのは当然だが、フロントガラス、両サイドのフロント窓ガラスに遮音性をもたせ、外界の音を高レベルで遮断している。隣を走る大型トラックやバイクのエンジン音などもほとんど遮断され、窓越しに話しかけられても聞こえないほどだ。

 路面の凹凸に対しては、しなやかに吸収し、ハーシュも弱く快適だ。ただし、AWDに装着されるミシュランの20インチタイヤはEV用の専用タイヤだということだが、トレッドパターンが細かくブロックの高さが大きい。インナーに吸音スポンジを内包していてロードノイズは小さいが、細かなシミーをステアリングが拾っていて高級感に乏しい。RWDはコンチネンタル社の19インチで、こちらのほうが好印象だった。

総評

 BYDのシーライオン7は、デザイン、性能、快適性の各面で高い完成度を持つクロスオーバーEVとして完成させられていた。とくにエクステリアのデザインや高級感あふれるインテリア、力強い加速性能は大きな魅力だ。

 一方で、走行フィールには細やかなセッティングの妙がない。数値的に優れていても、感応的な走る喜び味が少ない。総じて、シーライオン7は、BYDの技術力とデザイン力を示す一台であり、今後の進化にも期待したい。


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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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