S210はMTじゃなくCVT! Sシリーズ初の「2ペダル」を採用した深い理由

この記事をまとめると

スバルからSシリーズの最新作となる「S210プロトタイプ」が登場

■これまでのSシリーズとは異なりS210プロトタイプはATのみのラインアップとなる

■ペダルとステアリング操作に集中できる2ペダルの採用も正しいひとつの方向性といえる

スバルS210プロトタイプはCVTを採用

 STIのコンプリートカーのなかでも、特別な存在である「Sシリーズ」。最新のS210は国内で久々のSシリーズとなる。最新Sシリーズなだけあって、優れたパフォーマンスを誇るが、これまでのSシリーズとは異なる点がある。それは3ペダルマニュアルではなく、2ペダルとなっていることだ。

じつは海外市場にはラインアップしている3ペダル

 今回のSシリーズ、S210は、日本では2ペダルのみがラインアップされているWRX S4をベースとしている。それならば仕方がない……と思われるかもしれないが、海外市場では3ペダルのWRX S4も販売されているのだ。

 そのような状況を鑑みると「台数限定で価格も高くなるSシリーズならば3ペダルMTでもいいじゃないか!」という声があるかもしれない。しかしS210は、スバルパフォーマンストランスミッション(CVT)となっていて、これに対して残念がる声もSNSなどでは見られた。

3ペダルと2ペダルではAWDシステムが違う!

 ただ、海外市場で販売されているMTのWRX S4と日本市場で販売されているCVTのWRX S4は、AWDシステムに大きな違いがある。スバルパフォーマンストランスミッションのほうはVTD-AWDと呼ばれるシステムが採用されていて、こちらはトルクを前45:後55に不等配分している。これによりスムースなコーナリングを実現しているのだ。また、走行状況によってトルク配分を連続可変制御しているため、トラクション、直進安定性、コーナリング性能とあらゆる性能を高次元で実現させることが可能なのだ。

 対するMTのWRX S4は、ビスカスLSD付センターデフ方式フルタイムAWD。電子制御をもたないシンプルなシステムで、基本的にトルクは前50:後50。タイヤが空転した際は、ビスカスLSDが反応して前後のトルク配分を実施する。

 なお、これまでスバルのMT車のスポーツAWDシステムといえば、DCCD方式AWD(ドライバーズコントロールセンターデフ方式AWD)があった。長年進化を続けてきたシステムだが、前41:後59を基本にトルクを不等配分していて、レスポンスに優れるトルク感応機械式LSDと緻密な制御が可能な電子制御LSDを組み合わせたものであった(WRX STIのD型からは全域で電子制御LSDへと進化)。また、前後のトルク特性もドライバーによって任意で変更できるシステムであった。

 このような優れたAWDシステムとMTの組み合わせが現状ベースとして存在してない……というのもS210にMTが採用されなかった理由かもしれない。通常モデルならばともかく、Sシリーズは、「FRを思うほど意のままにターンインできて、優れたトラクション性能をもつ」相反する性能を両立ができるクルマ、というのがスバルなりの考えなのだろう。

S210のトランスミッションは専用チューニング

 ではS210は、ベースのWRX S4と同じトランスミッションなのか? といわれるとそうではない。専用チューニングされたエンジンに合わせて、コチラも専用チューニングが施されている。低回転域のトルクを活かす制御を採用し、それに加えてより素早い変速レスポンスを実現しているのだ。

 S210はニュルブルクリンク24時間レースで得たノウハウが全面に投入されたモデルだ。ニュルでは単純な速さだけでなく、ドライバーが安心して運転に集中できて思った通りの反応をクルマが見せてくれる……、そんな要素が必要となる。そういったニュル由来のコンセプトを考えれば、よりペダルとステアリングの操作に集中できる2ペダルトランスミッションの採用は、正しいひとつの方向性といえるのではないだろうか。


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西川昇吾 NISHIKAWA SHOGO

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