ファンクラブだけのスペシャルトークショーで裏話炸裂! で、筆者が所属となったのはAJホイト。2013年から2016年まで琢磨選手がインディカーシリーズに参戦していたチーム名だ。チームメンバーは4名だったが、1名が消息不明(!?)になってしまい、レースはピット回数を追加しながら急遽3名で戦うことに。
メンバーは、「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」の卒業生である中学生の小野さん(全日本大会出走歴あり)と、なんと琢磨選手のヘルメットデザインを担当している中村さん(フォーミュラやS耐走行があるガチの経験者!)、と、全身ずぶ濡れでグロッキーな井上(モータースポーツにわか)である。強者揃いで肩身が狭い!
なお琢磨選手は、全日本EVカート選手権で使われる、TOM’S製のマシンをもち込み、決勝レース20分を1人で走るというルール。ピット回数は5回とのことだが、計算上は全出走者が琢磨選手と一緒に走れるという、超スペシャルな構成。こんなこと早々ない機会だ。
EVカートに乗る佐藤琢磨選手 画像はこちら
スタートは筆者が担当。土砂降りかつ全身ずぶ濡れで最悪な状況なのだが、前にジャーナリストでお馴染みの桂 伸一氏を追いかける琢磨選手がいたものだから、無理を承知で追いかけ回すことに。川のような路面にスリックタイヤ、かつ慣れないEVカート(経験上2回目)という条件であったが、ちゃんとアクセルのオン・オフを使って、荷重移動してやると、意外にも曲がってくれることが発覚。レジェンドふたりの背中を追いかけながら、抜くこともなければ後ろからズバズバ抜かれることもなく、担当スティントを何とか無事にクリア(!?)。「これでなんとか許してほしい」と心の中で叫んだのは内緒だ。
そんなこんなで、天気の悪さを感じさせないくらいの盛り上がりっぷりで幕を閉じた、前半のカートセッション。琢磨選手は、「電動カートは静かだし、レスポンスもいいし、レンタルカートという特性を考えると、マシンの個体差も少ないしいいですよね。いい経験ができました」と語った。
Takuma Club Kart Meetingの様子 画像はこちら
後半はトークセッション。この会から参加のファンも数多くいた。
トークショーでは、まず最初に2024年、レイホール・レターマン・ラガニン・レーシングからスポット参戦したインディ500の映像を放映し、「このときじつは〜……!」みたいな形で、琢磨選手がインディ500の裏話を挟む形で解説。「午前や午後で気温が違うので速さが違う」、「380km/hから一瞬滑ってわずかにカウンターを当てる瞬間がめちゃめちゃ怖い! 映像じゃ大したことないように見えるけど(笑)」……などなど、走ってる人にかわからない話などもして、会場を盛り上げた。
Takuma Club Kart Meetingの様子 画像はこちら
ちなみに、4月にはF1日本GPもあるが、その前に1度アメリカに戻り、マシンの準備やシミュレーターを使ったトレーニングなどを行う。日本GP後はまた再びアメリカに向かい、その後は本番までずっとトレーニングをする期間となるそうだ。
そしてこの日は、2025年のインディ500に関する詳細の発表などが行われた。2025年、 琢磨選手は2012年、2018~2021年に所属した「レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング」から出走する。チームスタッフたちは、今まで琢磨選手のレースシーンを各チームで支えてきたエンジニアたちが集結する形でサポートするそうで、気合十分。スーパーフォーミュラで某選手をサポートするメカニックも、この日だけは琢磨選手をサポートするそうで、アメリカに駆けつけるという。
Takuma Club Kart Meetingに参加する佐藤琢磨選手 画像はこちら
また、インディカーシリーズではシボレーとホンダのエンジンが使用されているが、ここ数年はシボレーに押され気味とのことで、2025年はホンダエンジンを使うチーム全体の戦力底上げに注力し、エンジンなどのパワーユニットの改良を進めているそうだ。
また、琢磨選手はHRCのエグゼクティブアドバイザーや、HRSのプリンシバル(校長)を務めている。「4輪のレース全体を俯瞰して見つつ、若手の育成に注力したく思ってます。仕組みも変わってきているので、より幅広く丁寧に、力を入れて育成できるようになるはずです」と、若手育成に関する意欲を語った。
「それと、レースをする上で必要なのは求心力です。速いだけではなく、どんな人にでも愛される人にならないと、サポートしてもらえません。レースはひとりじゃどうにもなりませんから。HRCとしてが、若手が求心力のある人に育ってもらいたいなという想いもあり、レース以外のサポートにも注力していきたいと思ってます」と、琢磨選手の考えや想いも語られた。
Takuma Club Kart Meetingに参加する佐藤琢磨選手 画像はこちら
その後は、ファンの人たちからの質問コーナーも開かれた。参加者からは、「活動中に壁に当たったらどうしますか?」という問いに関しては以下のように答えた。
「まずは壁を低くしましょう。とりあえず低くすると楽になりますから。夢はいっぱいもつことはいいんですが、目標はとりあえず低くしないと、すぐ挫けてしまうと思うので。まずはある程度の高さにしておいて、まずは成功することが大事。あと、時間は有限なので、時間を決めてやると、自然と追い詰められるので、達成しやすくなります。それと、目標や夢は周囲にいいふらしましょう。そうすると、誰か手を差し伸べてくれる率が上がります。心に秘めていると誰もわかりませんからね」。
そのほかには、「昨年の雨のインディでは何してましたか?」という問いに対して、「すみません、部屋でのびのびとしてました(笑)。ちなみに、レースの2時間前には食事を終えていたいので、細かく食べてコンディションの調整をしてましたね」という、裏話を聞くこともできた。
Takuma Club Kart Meetingに参加する佐藤琢磨選手 画像はこちら
イベントの最後には、琢磨選手が実際に使っていたシューズやヘルメットのバイザー、サイン入りグッズなどが当たる抽選会も開催され、会場は大盛り上がり。ファンミーティングでしか味わえない、貴重な時間となった。
ちなみに土砂降りのカート大会の結果だが、琢磨選手はなんと最後尾スタートからの追い上げで2位! さすが世界トップのプロドライバーだ。では我々のAJホイトはどうなった? というと……まさかの優勝という結果に。即席チームの皆さんありがとうございました。ちなみにこの格好いい盾、琢磨選手のメインスポンサーを務める金属加工メーカーのAMADA製とのことだ。
Takuma Club Kart Meetingの表彰式 画像はこちら
第109回インディ500決勝レースは2025年5月25日(現地時間)に開催される。3度目の優勝を狙う、琢磨選手の熱い走りに注目したい。