タクシーの近距離利用で嫌味タラタラ……って客が悪いの? そろそろ海外を見習って「近距離を使いやすい」タクシーの整備をすべきとき (2/2ページ)

タクシー配車アプリの普及で変化が求められるタクシー業界

 そもそも海外では長距離利用にこだわる運転士は少ない。それよりは、自分がメインとしている地域で近距離でも数をこなすほうが効率的と考えるのが、ある意味世界共通のようになっている。日本では営業区域が決まっていることもあり、仮に都心から都県境をまたぐほどの長距離の目的地へ向かったとしても、帰りは都内へ戻る利用者以外は乗せてはいけないことになっているので、多くのケースでは空車で都内まで戻ってくるので、日本のタクシー運転士でも長距離を嫌がるひとは存在する。

 ここのところは、スマホアプリ配車サービスの普及で営業区域内にて馴染みの薄い地域へ行ったときでも、帰りにその地域内での配車要請が入るので、空車で自分のテリトリーへ戻ることなく稼ぎながら戻ることが多くなっている。先日も自宅最寄り駅からスマホで配車を試みると見慣れないタクシー会社の車両がマッチングした。到着して乗り込むと、「ここら辺はあまり詳しくいないのですが」と声をかけられた。このようなケースは最近珍しくなくなってきた。会社ごとの無線配車ならばこのようなことはなく、自分の会社がフォローしている地域でなければ新たな配車は期待できなかった。

 スマホアプリ配車サービスの普及で、多くの都市部ではタクシーの稼ぎ方は大きく変わっている。過去には深夜のロング(長距離利用客)がその日の稼ぎを大きく変えていた。しかしいま、都心部でのピークタイムは午前7時から10時あたりであり、この時間帯にどれだけ稼げるかが大切となり、勤務シフトもこれに合わせる事業者が多くなっている。

 いまどきの稼ぐ運転士はスマホアプリ配車などデジタルツールをどこまで使いこなすことができるかにかかりつつある。そして時間帯ごとに配車要請の入りやすい場所で待機することができるかである。また、スマホアプリ利用者は、乗車後に運転士の評価だけではなくチップを送ることもできる。このスコアリングのよい運転士には、あらかじめ配車要請するときに目的地設定するので、長距離利用客を優先的に配車してもらうことができるプラットフォームもあると聞いている。

 稼ぎ方が変わってきたとはいえ、近距離利用で嫌な思いをしたという声はいまだに絶えない。コロナ禍でいったん運転士が大幅に減ったあと、スマホアプリ配車の本格普及とタイミングを同じくしてタクシー運転士となったひとはタクシー運転士の約半分くらいともいわれている。まだまだコロナ禍前の稼ぎ方にこだわっている運転士がついつい近距離利用で嫌な顔をしてしまうのかもしれない。

 デジタルツール導入でタクシーの営業環境が変わってきているのだから、そろそろデジタルの力でこの「近距離利用に嫌な顔される問題」を業界総出で解決する時期に来ているのかもしれない。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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