
この記事をまとめると
■シトロエンの「ハイドロニューマチック」という制御は世界中に多くのファンを抱える
■最後にハイドロニューマチックを搭載していたのはエグザンティアだ
■自動車評論家の巨匠も愛用した名車であった
DS由来の最後の油圧制御を搭載した名車
「雲の上に乗っているよう」とまでいわれる乗り心地に根強いファンがいる、シトロエンの「ハイドロ」。
そのオリジナルになるのが、1955年発表のDSで本格的に採用されたハイドロニューマチック・サスペンションを核とする油圧システムだ。
その後1999年発表のXMで、電子制御を組み合わせたハイドラクティブに進化したものの、しばらくはハイドロニューマチックも残っていた。では、最後にハイドロニューマチックを積んでいたのはどの車種か。日本に正規輸入されているモデルでいえば、エグザンティアになる。
エグザンティアは日本でも大ヒットしたBXの後継車として1993年に生まれた。ボディはサイズが大きくなった以上に、剛性が大幅に向上。XM同様、ベルトーネが手がけたデザインは、より万人向けの整ったフォルムだった。セダンとブレークがあり、前者はハッチバックながらリヤに短いノッチをつけた、2.5ボックスだったことも特徴だ。
エンジンは、当初は2リッター直4だけだったが、途中でXMに積まれていた3リッターV型6気筒を追加。このうちV6はハイドラクティブの進化版ハイドラクティブ2だけだったが、4気筒はハイドロニューマチックも選べた。
さらに正規輸入されなかったが、アクティバというモデルもあった。こちらはハイドロニューマチックでは各輪、ハイドラクティブでは追加で前後アクスルにも装着していたスフィアを、前後スタビライザーにも付けて、コーナーでのロールを抑えるという、いわゆるアクティブサスペンションだった。
市販のシトロエンでこの機構を搭載したのはエグザンティアだけ。つまりエグザンティアは、3種類の油圧サスペンションを用意していたのである。
そして後継車のC5に搭載されたハイドラクティブ3は、油圧システムをブレーキやステアリングのパワーアシストに使わず、サスペンションだけとした。なのでDS以来のシステムを使った最後の車種も、エグザンティアになった。
エグザンティアは自動車メディア業界の人々にも愛された。なかでも有名なのはカーグラフィックを創刊し、日本の自動車ジャーナリズムの礎を築いた故小林彰太郎さんで、長期テスト車として乗りはじめたところ大いに気に入り、通常は長くても2年ぐらいで次のクルマに変えるのに、5年10万km以上も乗り続けたというエピソードがある。
実用車としてこれほど役に立つクルマはないというのがその理由。ハイドロの乗り心地、優れた直進安定性、パッケージングのよさに加えて、BXまでは悩みでもあった信頼性も上がったので、5年10万kmをともにできたと書いていた。
このエピソードだけでも、エグザンティアは価値のあるクルマだと思っている。