
この記事をまとめると
■ラインアップにMTを用意していないメーカーが増えた
■MTが減った理由にMTと親和性の高いクルマが減ったことがあげられる
■各メーカーともMTの設定を見直すことで自動車業界を活性化する手段となる
ひと昔前に比べてMTの選択肢が大幅に減っている
ホンダシビックでは、6速MT(マニュアルトランスミッション)の人気が高い。2024年10月にシビックがマイナーチェンジを実施したときは、6速MTを搭載するRSの販売比率が受注総数の67%を占めた。
その一方でMTを用意しないメーカーも増えた。とくに注目されるのがスバルと三菱だ。かつてのスバルは、WRX STI、レガシィツーリングワゴン/B4などにMTを設定していた。三菱もランサーエボリューションシリーズ、コルトラリーアートバージョンRなどでMT車を選べた。
それなのにいまのスバルに用意されるMTは、OEMで取り扱う軽商用車などを除くとスポーツカーのBRZだけだ。三菱のMTは、OEMを除くと1車種もない。
MTはスバルと三菱以外でも減っている。たとえばマツダでは、以前はCX-3、CX-30、CX-5でも6速MTを選べたが、いまはこれらの車種がATのみになった。トヨタもカローラセダン/ツーリング/スポーツの現行型が登場したときには6速MTがあったが、いまはATのみだ。このようにMTを選べるメーカーでも、選択可能な車種が減っている。
なぜMTが激減したのか。この背景には複数の理由がある。まずはユーザーから見て、MTと親和性の高い車種が少なくなったことだ。
たとえば峠道をMTで走っているとき、カーブが迫るとヒール&トゥなどを使ってシフトダウンを行う。エンジン回転を適度に高めてカーブに入り、出口が見えたらアクセルペダルを踏み増す。エンジン回転が上昇しているから、力強く加速しながらカーブを抜けられる。MTはこのような運転のプロセスに組み込まれ、ドライバーにさらなる楽しさを与えるメカニズムに位置付けられる。
そうなるとMTで運転を楽しむには、重心を低く抑えるなど、車両そのものがスポーティな走りに適している必要がある。MTを採用する車種として、先ほど名前を挙げたシビックRSやスバルBRZ、マツダのロードスターやマツダ3などは、いずれも全高を1500mm以下に抑えて重心も低い。