重大事故発生で市販化は幻に
そして、ティアドロップスタイルながら、最大11名が乗車できるというのもダイマクションカーの特徴。6.1mという全長はマイクロバスのそれに等しいもので、サイズだけでも大衆へのインパクトは相当なものだったに違いありません。
で、絞られたテールエンドには1輪のみ。しかも、この後輪で操舵するという方式ですから、ドライバーは大いに戸惑ったといいます。とくに、横風が強い場合は直進するのが難しく、フラー自身も何度か事故を起こしているのだとか。
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また、駆動方式も一風変わったもので、V8エンジンはリヤエンドに搭載され、フロント2輪を駆動するというリヤシップ・フロントドライブ(RF)という代物。これは、フォードのロードスターから駆動系を丸ごと流用し、前後逆に配置した都合でした。現在でもFF車の駆動系をミッドに積んでMR化する手法がありますが、1930年代に思いつくあたりフラーは只者ではありませんね。
前述したとおり、ダイマクションカーは万博に出品されただけでなく、デモ走行まで行われました。が、ここで思わぬアクシデントが発生。走っている姿をよく見ようと、近づいてきたクルマが追突。ダイマクションカーは横転し、運転していたフランスの将校が死亡、乗員も何名かが負傷するという痛ましい事故でした。これで出資者は引っ込んでしまい、ダイマクションカーの量産計画は水泡に帰したのでした。
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しかし、フラーはこの1号車を修復しただけでなく、オーダーによって2号車、そして3号車を作っています。1号車はアメリカ政府に買い取られたものの、倉庫の火事で焼失。3号車は転売が続いた末に行方不明。現存しているのは2号車のみですが、フラーの死後、この2号車を参考にして忠実なレプリカ、4号車が作られています。
アルミニウム製外板に覆われたタイヤハウスや、複雑な面を見せるフロントウインドウ、そして木で構成されたインテリアなど、いま見ても新鮮です。もちろん、実走行が可能だそうで、例の後輪1輪駆動&操舵もオリジナル同様。
100年近く経っても、ドライバーを戸惑わせているクルマなんて、これからも生まれてこないこと間違いありません。