さまざまな業界のベテランがトラックドライバーに
大手企業の部長クラスともなると、その職務に対する責任も重大なものとなる。それに対する地位と報酬を得ることはできるものの、その職責に比例してストレスも大きくなることだろう。前述の大手企業では、そういった職責の進化、成長に疲れてしまった中高年社員がドライバーへの転籍を希望しているという。
「管理職からドライバーに仕事を変えたことで、収入は確かに減りました。でも飲み会やゴルフやらで出費していたお金も大幅に減ったことで、むしろ生活はラクになってます」という元部長のドライバーからの声もある。
このような一般企業での中高年のドライバーへのジョブチェンジのほか、自衛隊でも隊員の定年退職後の職業として、トラックやバスのドライバーの仕事が注目されている。自衛隊の定年は、民間企業よりもずっと早く、とりわけ現場の中核を担う下士官である1曹は56歳、2・3曹は55歳とまだまだ現役! といえる年齢で職場を去ることとなる。国の巨大組織である自衛隊では、再就職支援制度も充実しているが、そのなかで、近年ではとくにドライバーという職業を選ぶ隊員が増え、また運送会社やバス会社もその中高年の新人ドライバーを求めているという。
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曹クラスの自衛官、とくに陸上自衛隊の隊員はその仕事の特性から、大型車や二種の運転免許、また大型特殊などの免許を隊内で取得している人材が多い。また長年、厳しい規律のなかで仕事を続けてきたベテランの自衛官は、企業にとっても即戦力の「ほしい」人材になっている。ドライバーの人手不足を解消したい運送業者やバス会社と、セカンドライフの仕事に資格とキャリアを活かしたい自衛官のマッチングを進めるため、全国各地の自衛隊の駐屯地などの拠点では、退職予定の自衛官を対象とした運輸業の合同説明会や運転体験会が盛んに行われている。
これまでさまざまな業界で活躍してきたベテランの中高年たちは、2024年問題にともなうトラックドライバーの人手不足を解消する貴重な人材として期待されているのだ。