三菱の新型ハイブリッド車「エクスフォース」が燃費も走りも激熱! 発表された現地タイで実車をみつつ開発者に直撃取材した (2/2ページ)

FFのSUVだが「三菱はなんちゃってを作らない」

「エボ10(ランサー・エボリューション10)からアウトランダーPHEV、エクリプス クロスPHEVの開発を歴任して4WDを極めてきた思いもあり、アセアン向けにFFプラットフォームをやることになった当初は少し戸惑いもありました。一方、モーター駆動の2WDでも新しいことにチャレンジしたいという強い意志をもっていました。タイは雨季がありますが、ドライにハーフウエットにヘビーウエット、冠水したりと、天気や走行状況が目まぐるしく変わります。6割ほどが平地の国ですが、チェンマイには2500m級の山や国境付近には34%にもなる壁のような坂もあります」

バンコク国際モーターショーの会場で説明してくれる上平さん

 FFでありながら、7つものドライブモードを備える点もエクスフォースHEVモデルの特徴。うち2つは「EVプライオリティ」と「チャージ」という、電気で走る/電気を貯めるに特化したモードで、ほかの5つは「ノーマル/ターマック/グラベル/マッド/ウエット」と、異なる路面状況に細かに対応する。アクティブヨーコントロール(AYC)による前輪左右の駆動力差動と、トラクションコントロールやスタビリティコントロール、加えてパワートレイン制御や電制ステアリングをも組み合わせた統合制御の成せる業だが、電動モーターならではの素早い反応により、ドライバーの意のままの路面に合った最適な動きに変化する。

各種走行モードを表示するモニター

「FFの2WDですが、リヤ側はブレーキを使って4輪をコントロールする四輪制御の考え方を取り入れ、さらにモーター制御を加えることで、ガソリン車やエンジン駆動がメインの他社のHEVでは難しい、明確なモードごとの違いを出せるんです。『一車種に盛り込むより、車種ごとにモードをわければいいのに』なんていわれたこともありますが、先ほど申し上げたように、タイをはじめとするアセアンのインフラや環境は厳しいですからね。そんな中でもお客様が毎日、無事に目的地に行き、帰って来られるクルマを作らなきゃいけない。三菱自動車のSUVである以上、“なんちゃってSUV”では通用しません」

 このような本格SUVとして、サイズや取りまわし感も魅力的ながら、ヤマハのプレミアムオーディオを選べるなど、装備やインテリアの質感レベルも高い。

三菱XFORCE HEVのインパネ

「当社はもともと、実用性重視のものづくりは得意でしたが、最近はエンジニアとデザインの融合が上手くいっていると思います。ダッシュボードのファブリック素材なども、デザイナーが使いたいといえば、エンジニア側が防汚加工を見つけてきたり。タイでは中国車が先進的な機能やデザインをどんどん投入しています。アセアン市場の顧客の目が肥えてきていますから」

三菱XFORCE HEVのフロントシート

 もしかすると、タイの人たちが「ピュアなミツビシ製ハイブリッドか?」と上平さんに訊ねる理由は、三菱自動車が長年築いてきた堅牢なクルマづくりへの信頼と、表向きには都会派をうたうこのコンパクトSUVにも、“三菱らしさ”が宿っているはずだという期待が込められているのかもしれない。

 ひとまずタイでの車両価格は89万9000バーツ(約398万円)~。タイからの成り行きと展開が、じつに気になる一台だ。


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