三菱の新型ハイブリッド車「エクスフォース」が燃費も走りも激熱! 発表された現地タイで実車をみつつ開発者に直撃取材した (1/2ページ)

燃費は脅威の24.4km/Lを達成!

 2025年3月20日、タイのバンコク国際モーターショーの開幕直前、三菱自動車がアセアン&世界戦略車である「エクスフォース」のハイブリッド版を、世界初公開した。

 エクスフォースのICE版は2023年よりインドネシアを皮切りにデビュー、5人乗りのコンパクトSUVとしてアセアンや中東に中南米、アフリカなどに展開する世界戦略車で、そこに待望のHEVモデルが加わったのだ。

三菱XFORCE HEVのフロントスタイリング(ホワイト)

「まずタイの方に尋ねられたのは、『タイ生産のミツビシ製ハイブリッドか?』ということでしたね。『そうです』と答えると皆さん、一様に満足そうな顔をされます(笑)」と、製品開発を率いる上平 真さんは笑顔で語ってくれた。

実車を前にインタビューに応じるチーフヴィークルエンジニアの上平 真さん

 エクスフォースHEVは昨年より発売されている3列シート7人乗りのMPVである「エクスパンダ―/エクスパンダ―クロス」のHEVモデルに次ぐ、三菱自動車による独自開発のハイブリッドとして2番目のモデルだ。開発は、日本はもちろんだが、タイのR&D拠点との共同による現地一体型で、同国のレムチャバン工場で生産される。

三菱XFORCE HEVのリヤスタイリング

 タイ現地で発表されたスペックによれば、全長4390×全幅1810×1650mm。この好ましいサイズ感に1.6リッターの高性能エンジン+モーターと比較的容量が大きめな1.1kWhブルーエナジー製のリチウムイオンバッテリーを組み合わせ、新開発のトランスアクスルを採用した第2世代の“三菱ハイブリッドEVシステム”を搭載。駆動用モーターの最大トルクは255Nmで最大出力116馬力(85kW)、カタログ燃費は94g/km(24.4km/L)を公称する新世代HEVだ。

三菱エクスフォースHEVの真横のスタイリング

「アウトランダーPHEVをすでに開発しており、走行中に電池がなくなればハイブリッド走行に切り替わるのだから、バッテリー容量を小さくしたらHEVは簡単に作れるだろう? と考える人は多いです。しかしこれはまったく別物で、新たにゼロからの開発が必要でした。というのも、PHEV制御は大きなバッテリー容量に助けられている面がかなり多く、バッテリーが小さなHEVでは、ほとんど新たに開発し直すことばかりなのです。しかしながら、開発初期の段階でアウトランダーPHEVで評価をいただいている、EVらしい滑らかで力強く心地いい走りを『HEVでも実現します!』と宣言し、“HEVでもPHEVフィール”を開発目標に掲げてしまったのです」と、上平さんは苦笑いする。

三菱エクスフォースのHEVエンブレム

「我々はHEVで後発ですから、当社を選んでいただくためには、他社とは違う、他社が真似できない“三菱自動車らしい走り”を、どうにかして打ち出す必要がありました。滑らかな走り味を実現するには、常にバッテリーとモーターをフル稼働させるということです。バッテリーは化学反応で電気を発生するわけですからすぐに熱くなります。お金をかけてPHEVのように内部に冷却システムを組み込めばラクなのですが、コンパクトSUVのHEVですからコストも厳しい。そのため、当社も空冷方式を採用しながら独自の熱マネジメント制御を開発し、コストと放熱効率を両立しました」

 PHEVのような滑らかな走り味を実現するカギは、バッテリーとモーターとエンジン、それぞれのハードワークを促すような緻密な制御だという。

車両を前に説明する三菱自動車の上平さん

「当社が目指した“優れた燃費と走りの両立”は、バッテリーとエンジン発電、モーター駆動の調和と、長年培ってきた電動技術の知見により、他社にない高度なエネルギー・熱マネジメントで実現されており、最新制御を搭載したエクスフォースHEVがその集大成となっています。この技術は、昨年日本で発売した新型アウトランダーPHEVにも反映され、性能が大きく向上しました」

 カタログ値で24.4km/L(NEDC)と燃費でもクラストップレベルとなった三菱自動車のHEVシステムだが、先行発売したエクスパンダーHEVから共通パーツは少なくない。今回大きく進化した点はトランスアクスルだ。

三菱エキスパンダーHEVのフロントスタイリング

「エクスパンダーHEVは3列シートのMPVで、3列シートながら鈍重さを感じさせない加速感と、可能な限り燃費を考慮して開発した第1世代のHEVシステムでした。第2世代となるエクスフォースHEVでは、燃費を向上させるため、トランスアクスルを一新。第一世代では、エンジン駆動のハイブリッド走行中にもモーターを引きずっている状態でかなりのフリクションとなっていましたが、モーター駆動を完全に切り離す“ディスコネクト機能”を搭載。さらに、ドグクラッチ化や効率が向上したジェネレーターを採用したり、ジェネレーターやモーターをトランスミッション内部に組み込んで一体とする構造の合理化等で、システムとして20%以上の燃費向上に繋がりました」

三菱XFORCE HEVの燃費履歴を表示するモニター

 ただ、切り離し機構とドグクラッチ化は、アクセルワークに対して、加速のタイムラグが生じる欠点とも隣り合わせとなる。意のままに操れる走りやすさとは相反しないのか?

「フリクションを減らすためにドグクラッチを用いていますが、モーターをエンジンからの駆動でまわっている軸に接続させるときに、モーターのギヤを高精度にコントロールしながらまわすので、きっちりシンクロします。最後はアクチュエーターで部品同士を噛み合わせる形になりますが、タイで10万km以上を走行してもシンクロのミスで走れなくなったトラブルは一度もありません」


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