統一すりゃ誰も間違えないのにナゼ? クルマの給油口の位置はどうやって決まるのか

この記事をまとめると

■給油口の位置は燃料タンクのレイアウトによって決まる

■衝突安全性や利便性を考慮し、車種ごとに異なる設計がされている

■スバル車は運転席側に統一するなど、メーカーごとの哲学もある

給油口の位置が統一されないナゾ

 エンジン車に乗っているならば、ガソリンや軽油(ディーゼル)の給油は欠かせない行為のひとつ。最近ではセルフ給油ステーションが増えてきたこともあって、愛車の給油口が左右どちらにあるのかを把握しているオーナーも多いだろう。

 もし、給油口が左右どちらにあるのか覚えていなくても大丈夫だ。ネット記事でよく見かけるように、よほど年式の古い旧車でないかぎり、燃料計に書かれた三角や矢印のマークによって給油口の位置を示すようになっている場合がほとんどである。

 それはともかく、「矢印などで給油口の位置を示すくらいなら、最初から左右どちらかに統一すればいいじゃないか」と思う人も少なくないだろう。

 しかし、給油口の位置を統一するのは合理的とはいえない。なぜなら、給油口の最適な場所は燃料タンクのレイアウトによって決まってくる面があるからだ。

 極端な例を示すと、リヤエンジンレイアウトを伝統的に採用しているポルシェ911の燃料タンクはフロント側に置くことになる。そのため、給油口はフロントの右フェンダー部分に置くというのも一部のモデルを除き伝統となっている。

 911は特殊なパターンだとしても、重量配分や衝突安全性などさまざまな要素で燃料タンクの位置は決まってくるもので、給油口の位置を統一することは、そうした設計自由度をスポイルすることになってしまう。

 また、エンジンの上に座るキャブオーバータイプの1BOXでは、前席ドアの下あたりに給油口がおかれているケースが多い。これは燃料タンクの位置への最適化であると同時に、給油中に後席乗員が乗り降りできるというメリットにもつながる。

 余談だが、スライドドアのミニバンなどではリヤフェンダーに給油口をおいているケースもある。そうなると、給油口が開いているときに後席スライドドアを開けてしまうとドアがフタに干渉してしまうため、スライドドアを開かないようにする機構が必要となってしまう。

 ちなみに、トヨタ・ハイエースは助手席側フロントドアの斜め下に給油口を置くが、スズキ・エブリイなどの軽バンでは、運転席側ドアの下あたりに給油口があったりする。筆者個人の印象としては、セルフ給油で運転手が操作をすることを考えると、運転席側に給油リッドを置くほうが合理的に思えるが、各社それぞれの考え方があるようだ。

「給油のしやすさ」というドライバーファーストの哲学を明確にしていることで知られているのがスバルだ。現在、同社の生産する水平対向エンジンを積んだ車種については、給油口の位置が右側に統一されている。

 これは、「給油口は運転席側にある方が(運転席に近いほうが)便利で安全」というスバルの哲学によるもの。ちなみに、左ハンドル圏で売られているスバル車も給油口は右側にある。日本のメーカーが日本市場を大事にしていることがこうして感じられるのは、ファンにとってはうれしいエピソードかもしれない。


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山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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