ゴーンが「完璧な電気自動車」と表現! 日産の3人乗りEV「ブレードグライダー」は奇をてらったイロモノなんかじゃなかった

この記事をまとめると

■日産が2013年にブレードグライダーという3人乗りEVを発表している

■レーシングカーのでデルタウイングに近い雰囲気をもっている

■ブレードグライダーに通ずるモデルとしてZEOD RCというレースマシンを開発した

EV黎明期に誕生した斬新なコンセプトモデル

 ブレードグライダーは、日産自動車が2013年の東京モーターショーに出展した電気自動車のスポーツカーだ。そして2016年に、試作車を公開している。

 ブレードグライダーは3人乗りのオープンスポーツカーで、前1座・後ろ2座の配置となっているのが特徴だ。

 そして、車両の先端を狭め、前輪は横に並ぶように配置している。一方で後輪は、通常のクルマのようにトレッド幅があり、この後輪が駆動輪だ。前輪は、あまり操舵できないが、空気抵抗を減らす目的でこの造形になっている。問題の操舵角が少ないことによる曲がりにくさには、後輪が左右別のモーター駆動であるため、左右で回転数に差をもたらすことで曲がりやすく工夫がされている。デファレンシャルも、内輪と外輪の回転差を生み出す機構だが、それを意図的にモーターで行うことにより、旋回性の補助につなげている。EVならではの機能だ。

 EVに関して日産は、2010年に初代リーフを発売し、三菱自動車工業とともにEVの先駆者であることを自負する。それをさらに前進させる意欲や意気込みを、このブレードグライダーで示したといえる。

 なお、スペックは130kW(キロ・ワット)のモーターを後輪左右へ個別に配置し、最高時速は190km/h、加速は0-100km/hを5秒という数値を記録。バッテリーは、5個のモジュールを組み合わせた220kWの出力をもつリチウムイオンだ。

 当時の社長であるカルロス・ゴーンは、「このプロトタイプモデルは、運転の楽しさを追求すると同時に環境に対する責任を果たす『日産インテリジェント・モビリティ』の拡充を目指す、日産の意気込みを表しています。ゼロ・エミッションの将来を待望しているクルマ好きのお客さまにとって、『ニッサン ブレードグライダー』は完璧な電気自動車であると確信しています」と、語っていた。

 ちなみに、ブレードグライダーに通じるレーシングカーに、米国デルタウイングがある。それと同じデザイナーのベン・ボウルビーが、ブレードグライダーをデザインした。

 フランスのル・マン24時間レースは、早くから次世代レース車両の模索をはじめており、通常のクラスわけのほかに、環境に配慮した車両などへの特別枠を設けている。そこに参加したのが、デルタウイングだった。

 そして、日産がデルタウイングのあと、ZEOD RC(ヅィオッド・アールシー/Zero Emission On Demand Racing Car)として、シリーズ・ハイブリッド車での参戦を計画した。スポーツEVのブレードグライダーと、レースとのつながりを連想させるレーシングカーだ。

 しかし、2014年のル・マン24時間レースでZEOD RCは、変速機の故障でスタートから23分で棄権となってしまった。ただその間に、電気だけでコースを1周している。ほかに、予選中は、長い直線区間で時速300kmを記録。性能は申し分なかった。

 いま、市販EVの性能は、ポルシェ・タイカンなどの登場を通じて、ブレードグライダー以上となっている。それでも、初代リーフが誕生して間もない当時、EVが単に排出ガスゼロによる環境車というだけでなく、モーター駆動がもたらすかつてないクルマの価値を垣間見せるという、斬新な取り組みがあったといえそうだ。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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