ホンダの本気を見せてやる!
GOサインが出てスタートした、社内的にはこの前代未聞のプロジェクト。いい出したものの、1人で全部完結させるのはさすがに厳しい。とはいえ、みんな忙しいのに、このために開発メンバーを集めるのも後ろめたい……となったそうだが、結果的にメンバーが40人ほど集結。集まったのは有志たちで、なかには「子どもがコライドンが好きなので」という、子どものために参加するメンバーもいたそうだ。また、「ホンダらしさを実現するのに、二輪部門だけじゃ厳しいだろう」となり、なんとパワープロダクツ部門、マリン部門、和光研究所の先進技術研究部門などから人が集まり、社を挙げたプロジェクトにまで発展していったのだ。
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上からの許可もおりメンバーも集まり前準備は万端。2024年夏に本プロジェクトは本格始動した。
第1号メンバーである本プロジェクトの開発責任者を務める萩原和也さんがまず最初にやったことは、ゲームをやり込むことだったそう。「協力するといったものの、コライドンとはなんぞや?」という疑問を解決するには、まず相手を知ることが肝心。そこで、この発想になったとのことだ。家では時間無視で親がひたすらゲームをやるものだから、時間が決められている子どもからはクレームが出たそう。「ゲームが仕事」とは、子どもからしたら謎だし、きっと理不尽に感じたはずだ。
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そんなコライドンプロジェクト、やるとは言ったものの、ホンダでは今までやったことがない事案だったので、苦難の連続。
モンスターらしい鮮やかな色やグラデーションの表現は、普通に塗っただけではなかなか出せないので、このためだけに新色を開発し、社内にいる塗装のスペシャリストに、エアブラシを使って手作業での塗装を依頼。肌の質感(テクスチャ)の表現を徹底的にこだわるために、線は1本1本削り、彫っていく。こういったことが得意な社員が40名の有志のなかにいたらしく、お願いしたそう。そのほかの細かい部分の造形などは、仕事+趣味の融合で、得意な社員が担当しクリアしていったとのこと。
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なお、ホンダ好きであればこのコライドンを見てあることに気がつくと思う。そう。色がMotoGPなどでお馴染みである、伝統のトリコロールカラーなのだ。そんなこともあり、色表現にメンバーは並々ならぬこだわりがあったとのこと。それを証明するかのように、会場にはRC213Vも展示されていた。
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「ファンをがっかりさせない」
これがこのプロジェクトの大前提だ。なので、大きさもゲーム内の設定に忠実で、2mオーバーのサイズとなりド迫力。体重まで同じにしているそう。さらに、ゲーム内では主人公(プレイヤー)が乗ることができるので、もちろん人が乗れる前提で開発。
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「バイクは大人がターゲットですが、今回は子どもがターゲット。とにかく子どもを喜ばせることがこのプロジェクトの根幹にあります」とは坂本さん。
ちなみに、このコライドンは見た目も開発プロセスも先述のとおり、こだわりが詰まっているのだが、本当に凄いのはその中身。
先ず、タイヤのように見える部分は、実際に下部にタイヤが装備されており、走る前提で開発されている。フレームなどは完全オリジナルで、ベース車などはないそうだ。二輪のスペシャリストであるホンダならではのこだわりポイントだ。
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さらにこのコライドン。なんと自立するそう。どういうことかというと、コライドンの内部には、転ばないバイクとして話題となった、「ホンダライディングアシスト」の機能が搭載されている。よって、跨って走らせている状態でも転ぶ心配ゼロ。最新のテクノロジーが搭載される。なお、コライドンにこのライディングアシスト機能を移植してしまったせいで、メディア向けなどでお披露目していたライディングアシスト機能を搭載したバイクは現在動かないそう。それくらい本気でメカニズムも考えられている。
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さらに、この見るからに動きそうなメカメカしい足だが、ここはホンダのロボット「ASIMO」の技術が搭載され、走りに合わせて動くそうだ。久々にホンダの開発関係者の口からASIMOという名前を聞いて、少し感動してしまった。まだまだASIMOの灯火は消えなそうだ。
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さて、「やってみたい」というひょんな考えから、社を挙げて動かすことになったコライドンプロジェクト。我々の前にお披露目された状態ではまだ動かないそうだが、今後動くように調整され、2025年夏頃を目処に、完成発表を行う予定なんだそう。
もちろんこれは子どもを喜ばせることが大前提なため、子どもが乗れるような方向で現在調整中だ。会場内では開発メンバーに対して、「うちの子どもがコライドンが大好きで、ファンなので完成を楽しみにしてます!」なんて声も聞こえてきた。いつの時代もポケモンの魔力は凄まじい。
「大人の本気が子どもたちの夢になる」
1匹のポケモンが子どもたちにとって、ホンダが憧れの企業になるキッカケになるかもしれない。
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