もし市販してたら時代が変わった!? プリウス超えも噂された日産「AL-X」という燃費王に挑んだクルマ

この記事をまとめると

日産は1997年の東京モーターショーでコンセプトカーの「AL-X」を発表した

■直4直噴+モーターのハイブリッドとアルミスペースフレームによる軽量ボディが特徴

■正式な発表はないが10・15モード燃費で33.0km/Lくらいを実現していたと予想される

日産初のハイブリッドカーとなるかもしれなかった「AL-X」

 1997年の東京モーターショーで日産のコンセプトカーとして発表された「AL-X」を覚えているだろうか。角ばったボディに特徴的な縦型ヘッドライト、のちにセレナにも採用されたシュプールラインのようなサイドウインドウ下の波打つようなショルダーライン、そして直立しつつカクっとルーフに続くバックドアなど、エクステリア的にもかなり個性的なデザインが採用されていたコンセプトカーだ。ボディサイズは全長3750×全幅1695×全高1600mm。ホイールベース2360mmとされている。

 しかし、日産がいちから作り上げたAL-X最大の特徴は、地球環境のために、パワーユニットに直4直噴ガソリンNEOエンジン+モーターのパラレル式ハイブリッドを採用し(ミッションはHyper CVT)、さらにアウディやホンダNSXが先進性をアピールする軽量かつ堅牢なアルミのボディ骨格、つまり贅沢なアルミスペースフレームを用い、日産車としてこれまでにないボディの軽量化を目指していたことだ。

 アウディのA2やA8の例では、アルミスペースフレームを使うことで約200kgの軽量化が可能になるというのだから、AL-Xのハイブリッド×軽量ボディの効果は絶大なはずで、燃費数値こそ公表されていないが、30km/L(当時は10-15モード)を超える燃費性能が達成されていた可能性は否定できない。

 というのも、1997年といえば、プロトタイプが1995年の第31回東京モーターショーで参考出品された初代トヨタ・プリウスが世界初の量産ハイブリッドカーとして初期型で28.0km/L、最終モデルで31.0km/Lを達成していたわけで、それを超えることがAL-Xの開発目標であったことは想像に難くなく、その後「AL-Xの10・15モード燃費は33.0km/Lはいくんじゃない?」なんていう噂も巷で飛び交っていた記憶がある。

 33.0km/Lの根拠は、アウディA2 1.2リッターディーゼルターボモデルが、1999年に非ハイブリッドで33.0km/Lという超燃費性能を達成したこともあり、燃費数値の期待値としてあったかも知れない。

 ただし、ハイブリッド×スペースフレームというパッケージはコンセプトカーでは成立しても、市販車、それもコンパクトカーとしてはコストがかかりすぎることもあったはずで、結局、市販されることはなかった。パッケージ的には広々としたアップライトな室内空間、先進感あるインテリアデザインもあって、なかなか新鮮で実用的はあったものの、である。

 それでも、当時の日産はハイブリッドカーを諦めることなく、2000年4月に100台の限定車として、10・15モード燃費23.0km/Lのティーノハイブリッドを設定。ティーノはサニーのプラットフォームを用いて開発されたワイドな全幅1760mmかつ、前席ベンチシートによって5+1コンセプト、つまり前席ふたり+ひとり、後席3人乗車の特異なパッケージを採用したコンパクトカー(全長4270×全幅1760×全高1610mm、ホイールベース2535mm)であった。

 特筆すべきは直4の1.8リッターと2リッターのガソリン車でスタートしたものの、開発時点で1998年のデビューから2年後にハイブリッドカーの追加を想定した、高めのフロアとなる二重フロア(バッテリーの積載のため)をもつクルマでもあったのだ。

 話をAL-Xの燃費性能に戻すと、仮に10・15モード燃費が目標値33.0km/Lだったとすると、JC08モード換算で29km/L、現在のWLTCモード換算で25.5km/Lぐらいになるだろうか。つまり、ホンダ・フリードe:HEV AIR FF(25.6km/L)、ホンダ・フィットe:HEV BASIC 4WD(25.4km/L)ぐらいの、いまでもハイブリッドエコカーとして十二分に通用する燃費性能だったかも知れない。あくまで想像ですけど……。


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青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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