「宇宙一本気(マジ)な乗務員採用プロジェクト」がヤバい! この人手不足のなか200人を集めた手腕とは?

この記事をまとめると

■両備ホールディングスが乗務員200人を採用するプロジェクトを発表

■その名も「宇宙一本気(マジ)な乗務員採用プロジェクト」だ

■「宇宙一本気(マジ)な乗務員採用プロジェクト」の内容を解説

「再生請負人」とも呼ばれる両備ホールディングス

 2023年6月、バス、トラック、タクシー、フェリー、路面電車の乗務社員を、合計200人募集するというプロジェクトが発表された。発信元は岡山県を中心に、バス、タクシー、トラック輸送、路面電車などの運輸関連事業や生活関連事業などを手広く商う、両備ホールディングスだ。必ずしも全国的に有名な会社ではないが、中国地方、和歌山県、運輸関連事業者間ではその名を知らない人はいない。

 同社が有名なのは、経営不振に陥ったバス会社や鉄道路線を再生した実績をもち、「再生請負人」と呼ばれているからだ。代表的な事例は、岡山県の中国バスと和歌山県の和歌山電鐵(旧・南海電鉄貴志川線)である。前者では、車両整備や運転手教育を徹底すると同時に、地域事情に合わせた運行スタイルの構築を行なった。後者については、注目度の高い観光電車を設定。猫をモチーフにした「たま電車」などを走らせたり、猫を駅長に任命したりするなど話題性を高めることで集客を図っている。これらのことは、テレビでも特集された。

 このように、独特の経営スタイルをもつ同社であるが、「2024年問題」などから現場を担う乗務員の確保は、同業他社同様に相当苦労をしていたようである。

 そこで、「宇宙一本気(マジ)な乗務員採用プロジェクト」を発動し、これまでの乗務員のイメージを一変するプロモーションを実施したわけだ。インパクトの強い採用に特化したCMの放映や、ボディ一面に採用広告を掲出した広告専用バスの走行など、とにかく人目に付くことや好条件で多数採用するということを、大々的にアピールしたのである。

 また、同年8月にはバス、トラック、タクシーの運転体験ができる「大人の運転体験会」を開催。参加者は教官の指導を受けながら、実際に教習所のコースを走行してもらうというイベントを実施した。このときの参加は15人であったが、非日常的な体験に参加者の満足度は高く、同年10月に再び行われている。これら一連の活動の結果、2024年7月に200人の採用を達成した。

 そこで同社は、同年11月にこのプロジェクトの第2弾を始動し、1年をかけてさらに200人を採用すると発表した。第1弾の成功で、懸念されていた当面の乗務員不足は解消されたものの、安定的な総合運輸交通サービスの基盤構築を図ることが必要だと判断したからである。第2弾では乗務員職を年齢や性別にかかわらず、あらゆる層から選ばれる職業にするため、「稼げる、働きやすい、誇れる」といったことの質的向上を図ることに重点を置いた。

 具体的な施策としては、

・家族乗車証の支給:バス会社共通
・キャリア採用制度:両備バス
・奨学金返還支援制度:ニッコー観光バス、中国バス、井笠バス
・2年連続5%を超えるベースアップを実施:トラック

 などである。イベントも継続されており、同年11月には運転体験会を開催。12月には、両備グループ各社が合同で就職相談に応じる「合同お仕事相談会」を2回行っている。

 同社の会社再生手法もそうだが、まず「知ってもらうこと」「体験してもらうこと」に重点を置き、そこからファンを増やしていくことで、着実な成果を挙げている。人手不足に悩む全国の運輸・運送事業者にとって、問題解決に向けた何らかのヒントになるのではないだろうか。


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