この記事をまとめると
■年に数回ほどトラックドライバーコンテストが実施されている
■ドラテクだけでなく日常点検や出発前点検も審査の対象となっている
■コンテストの内容を見るとトラックの点検の重要さがわかる
日常点検や出発前点検も審査の対象
2024年10月、公益社団法人全日本トラック協会が主催をして第56回全国トラックドライバーコンテストが開催された。同じ月に、UDトラックスが主催するUDエクストラマイルチャレンジ2024も開かれている。いずれも、トラックドライバーを対象としたコンテストだ。
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両大会を傍から見れば、トラックドライバーが運転技術を競うイベントのように思えるのかもしれない。しかし、これらはF1レースなどのような極限の運転技術や、タイムトライアルを目的としたものではない。あくまで、日常の業務のなかで培われた技術や知識を、総合的に評価することに重きを置いたものなのである。
両大会はいずれも、現場で活躍するトラックドライバーの技能を評価し、称えることを目的としている。ただ、その背景にはトラックドライバーが背負う社会的責務を、コンテストを通じて再認識することで自覚と誇りをもち、安全意識の向上や交通事故防止を促進しようという狙いがあるのだ。ゆえに、ドライビングテクニックだけではなく、日常点検、出発前点検といった作業についても、厳しい審査の対象になっているのである。
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今回のトラックドライバーコンテストでは、日常点検の競技時間は2分間であった。時間的には短いが、その中身は非常に濃いものである。点検対象箇所は車両の前輪のみで、以下の項目をチェックする。
・タイヤ空気圧
・亀裂や損傷
・異常摩耗
・溝の深さ
・ディスク、ホイールの取り付け状態
点検時には、自動車安全運転センターにある安全運転中央研修所の教官が審査にあたる。彼らは、全国の警察や指定自動車教習所から出向しているプロ中のプロで、審査に一切の妥協がない。競技者の手順やチェックの状況などを確認し、的確な点検が行われているか否かを判断しているのだ。
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エクストラマイルチャレンジでは、10分かけて22項目の点検を実施する。おもに電気系統、ホイールナット、キャビン内計器、油漏れなどで、日常点検や運行前点検として実施される内容の一部だ。
過酷なのは、点検箇所のなかにわざと不具合が仕込まれているというところである。審査はUDトラックスの技術者が担当するのだが、彼らはトラックのエキスパートであるだけに、仕込まれた不具合はじつに巧妙なものなのだ。競技者は手順どおりに正確な点検をすればよいだけではなく、その不具合を見つけて指摘しなければならない。
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最近のトラックは完成度が高く、あまり故障をしなくなってきたといわれている。また、センサーなどが充実しているから、不具合が起きる前に異常を警告するシステムも確立している。これは便利なことではあるが、ドライバーがそれに頼りすぎると油断が生じることになるのだ。実際に以下のような故障や事故も起きている。
・タイヤ空気圧異常によるバースト
・ホイールナットの緩みによる脱輪
・バッテリーの過放電
・バッテリー端子の緩みや劣化
・ラジエータ欠損などによる冷却液漏れやオーバーヒート
・エンジンシール部などからのオイル漏れやオーバーヒート
これら故障、事故は、いまでも決して少なくない。これらの多くは日常点検や運航前点検を確実に行うことで防げる可能性が高まるのだ。トラックは過酷な環境で使用される車両だけに、トラックドライバーはプロとして点検作業を確実に実施し、事故を未然に防ぐ努力が求められているのである。