もうコアな「アメ車ファン」を追いかけるブランドじゃない! キャデラックの「右ハン+BEV」は日本での勝機が見える戦略だった (2/2ページ)

「キャデラック120年の歴史の重さ」は日本では軽い

 ここでリリックに話を戻すと、GMなりの事情はさまざまなものがあるだろうが、あえて日本国内であっても右ハンドル車のみとしたことの意味は大きいものと感じている。

 発表会では「キャデラック120年の歴史」といったことが繰り返し発言された。しかし、大変残念な話なのだが、日本国内ではその「120年の重み」を受け止められる消費者はかなり少数といっていいだろう。しかし、これが日本市場ではBEVの登場とともに幸いしているものと考えている。

 つまり、BEVというものは確かにICE車同様にタイヤ4本を履いた自動車であるが、ICE車とはまったく異なる存在ではないかと筆者は考える。そして、ICE車とは異なり、俗っぽいいい方をすれば油臭さなども感じないので、女性ウケがいいともいわれている。つまり、右ハンドルのBEVということになれば、いままでにない新たなキャデラックユーザーの開拓にはぴったりであり、キャデラックという存在を知らなかった層からは新たなBEVのスタートアップブランドのようなものと思われれば、日本国内においてはキャデラックブランド自体のリボーン(生まれ変わり)にもつながるのではないかと考えている。

 発表会では、2026年にさらにリリックよりはコンパクトな「オプティック」とミニエスカレードiQ(エスカレードのBEVがエスカレードiQ)ともいえる「ヴィスティック」という2台のBEVが日本国内に導入予定とも発表している。

 気がつくと、ICE車ではすでにセダンはなくSUVのみとなっているキャデラック。今後はBEVの販売状況次第ではフルサイズアメリカンSUVとなる「エスカレード」だけを残し、BEV専門ブランドとなるかもしれない。

 世界的には日本車のお家芸であるHEV(ハイブリッド車)が脚光を浴びているが、これは量販車を中心としたものとなっている。高級ブランド車に限って見れば日本国内でもBEV普及率は新車販売全体の1割を超えているともいわれている。ヨーロッパやカリフォルニアのように、「すべてをBEVに」というのはまだまだ荒唐無稽に近い話なのかもしれないが、いまもなおラインアップ充実のための新型車開発は積極的に続いているのである。

 日本市場も高級BEVにさらにフォーカスすれば、すでに有望市場になりつつあるのかもしれない。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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