この記事をまとめると
■ルノーがフラン工場にて「ルノー5ターボ3E」を限定公開した
■5ターボ3Eはインホイールモーターを採用した後輪駆動車となる
■日本でも2027年以降に発売することが決定されている
最大トルク4800Nmってゼロひとつ多過ぎないか!
クルマで庶民のアシといえば日本では軽自動車だが、欧州ではBセグのハッチバック。いまどきなら、ざっと全長4000×全幅1750×全高1450mm前後のサイズ感で、高速道路はともかく、街乗りや信号の少ない郊外路に焦点を合わせた、扱いやすいサイズの実用車といった趣だ。
ところがパリ郊外のルノーのフラン工場で、ディーラー関係者や報道陣を対象に限定公開された「ルノー5ターボ3E」の外寸ときたら、全長は4080mmなのに全幅は2030mmもあって、かつ全高は1350mmという超ロー&ワイド仕様。ホイールベースは2570mmだ。プロトタイプのときと違って、公開された市販仕様のエクステリアに大型リヤウイングは備わっていないとはいえ、眼前にするとそのプロポーションは異様きわまりなかった。でもどこかファニーでもある。
ルノー5ターボ3Eのフロントスタイリング画像はこちら
「4輪の配置、つまりジオメトリーはこれまでの市販車になかったほどスクエアに近いため、前にも横にも進みやすいんです」というルノーのプロジェクト担当者の説明にも、かなりシビれるものがあった。
アルミボディで内装はマルチェロ・ガンディーニが手がけたという5(サンク)ターボ1、内装を5アルピーヌターボと共有かつスチールボディ化で少し大衆化させた5ターボ2は、いずれも当時のR5(エールサンク、と読む)という超のつく大衆車を、ミッドシップエンジンレイアウト化してターボ武装するという荒っぽい手法で成立していた。
ルノー5ターボ1と5ターボ2のレーシングマシン画像はこちら
実用車モデルが「ターボ」でビルドアップされてムッキムキになったはいいけど、いわゆるスーパーなスーパーカーではなく、あくまで大衆車を起源にもつ「下町のスーパーカー」といえる。しかも今回は純BEVとはいえ、「1」と「2」の襲名披露として第3世代こと5ターボ3Eが登場し、2027年に市販車としてデリバリーされるのだ。
ルノー5ターボ3Eのサイドビュー画像はこちら
BEV=エコという、ステレオタイプ過ぎる図式や前提はすでに崩れているが、「市販車として5ターボ3Eが発売される意義はどこにあるか?」と問えば、フラン工場内の発表会場の入口に置かれたプチなポスターが回答になっていた。「―」の向きが微妙だが、はっきり「ターボドリフト」と読める。ドリフトはもはや日本のクールコンテンツのひとつで、5ターボ3Eの存在理由とはそう、ひたすら楽しくドリフトするためにほかならないのだ。
でも「電気自動車で何がターボなの? ブーストするにも排気圧がそもそもないじゃん?」という疑問は拭えないはずだ。そこで気にするべきは、公称スペック値だ。約547馬力の最高出力や0-100km/h加速3.5秒以下といった数値だけ見れば、1000馬力も当たり前のBEV界隈ではどうってことなく見えるかもしれないが、4800Nmという最大トルクには、正直、ゼロがひとつ多く付いているのかと当初思わされた。