たとえスポーツカーでも市販車はわざとダルに作ってる! ハンドルやペダルに「遊び」が必要なワケ

この記事をまとめると

■クルマのステアリングやペダルには「遊び」が設けられている

■鋭敏すぎるクルマでは常に微修正が必要になるので疲れやすく運転が重労働になってしまう

■ドライバーの操作に対してラグがないことを求められるレーシングカーでは「遊び」は必要ない

なぜ操作系に対しては「遊び」が設定されているのか

 クルマのハンドルやペダルには、操作が実際の動作に影響しない隙間、いわゆる「遊び」が設けられている。たとえばスカイラインGT-R(R32)の場合、ステアリングホイールの遊びは0~35mm、ブレーキペダルの遊びは3~11mm、クラッチペダルの遊びは5~12mmが点検基準値に設定されている。

 きちんと操作をするのなら、ゆとりや隙間に相当する「遊び」などは必要ないと思うかもしれないが、人間が操作する機械には、ある程度この「遊び」が設けられているのがひとつの基本になっている。

 一般道には轍もあれば凸凹もある。それらは常にハンドリングに影響を与え、ハンドルを小刻みに揺らすことになるし、ドライバーの操作に関しても、無駄な動きは一切許容しないとなると、常に緊張を強いられてたまったものではない。神経質な上司や、ヒステリックなパートナー、まじめだけが取り柄で冗談が一切通じない人物などとの付き合いと同じように、ナーバスでしんどいクルマになんて乗りたくはないはず。

 あくびをしたって、くしゃみをしたって、腰のあたりをモゾモゾさせたって、大した影響も受けず、そのまま走り続けてくれるクルマのほうが、普段使いにはありがたいというもの。鋭敏すぎるクルマでは運転している最中、常に微修正が必要になるので疲れやすく、重労働になるので、設計者は適度な「遊び」をあたえてクルマを作っているというわけだ。

 もっとも、正確無比な判断と正確無比なドライビングが必要とされるクルマ、たとえばレーシングカーには「遊び」は不要。よく整備されたフラットな路面=サーキットを高速で走るレーシングカーは、ドライバーの操作に対してラグがないことを求められるので、「遊び」はないに等しい。

 反対に不整地を走るSUVや車高の高いクルマは、ある程度「遊び」が大きくないと乗りづらい。

 そういう意味で、適度な「遊び」はクルマや走らせ方でも変わってくるが、操作を円滑にするために「遊び」は大事な要素で、クルマにも、人間関係にも、人生にも、「遊び」は必要不可欠なことだと覚えておこう。


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藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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