この記事をまとめると
■いすゞにはベレットの顔をしたトラックとバンがあった
■トラックもバンもベレットと同じ顔ではあったもののメカニズム的には大きく異なっていた
■どちらのモデルもそこまでの人気車種となることは叶わず後継モデルにバトンタッチした
ベレットと同じ顔をしたトラックと商用バン
いまでは「運ぶを支える」メーカーとして、トラックやバスといった商用車を中心に高いシェアを誇っているいすゞ。しかし、過去には普通車をラインアップし、人気を集めていた時代もあった。
そんないすゞの乗用車のひとつとして、当時としては多くの新機軸を盛り込んだ先進的なモデルとして存在していたのが1963年に登場した「ベレット」で、日本初のGTカーであるベレットGT、通称ベレGの呼称を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。
いすゞ・ベレットGTタイプRのフロントスタイリング画像はこちら
そんなベレットには、スタンダードな2ドア及び4ドアのセダンモデルと、前述のベレットGTやベレットGT タイプRの2ドアクーペボディが存在していたが、同じベレットの名をもつライトバンである「ベレットエキスプレス」と、同じフロントマスクをもつトラックの「ワスプ」というモデルが存在していたのだ。
ただこの2台はベレットと同じ意匠のフロントマスクをもってはいたものの、メカニズム的にはベレットとは大きく異なるものとなっていた。まずボディがモノコックとなっていたベレットに対し、ワスプやベレットエキスプレスは堅牢なラダーフレームとなっており、成り立ちからして異なっていたのである。
いすゞワスプの俯瞰フロントスタイリング画像はこちら
このあたりは供されるシチュエーションが異なるため、商用モデルにラダーフレームを採用するのは当然ともいえるのだが、ベレットエキスプレスは車名からもわかるようにベレットファミリーの一員としてカタログにも掲載されており、ベレットの優雅なスタイルや優れた乗り心地と居住性と、ワスプの堅牢さをもち合わせたモデルとなっていた。
いすゞベレットエクスプレスのフロントスタイリング画像はこちら
一方のワスプは、いわゆるピックアップトラックスタイルとなっており、当時ほぼ一強となっていたダットサントラックに対抗するモデルとしてリリース。
フロントマスクをベレット風にしたのはコストダウンが目的という意見もあるが、当時はまだまだ庶民がクルマを保有するのが贅沢だった時代であり、バンやトラックを平日は仕事に、週末はレジャーに使うことも珍しくなかったため、乗用車ライクなスタイルとしていたというのが実際のところだろう。
いすゞワスプのサイドビュー画像はこちら
ただ、いずれのモデルもそこまでの人気車種となることは叶わず、ベレットエキスプレスはフローリアンバンに、ワスプはファスターにバトンタッチする形で消滅することとなってしまったのだった。