この記事をまとめると
■トランプ大統領はアメリカ国外から輸入する自動車に25%の関税をかけようとしている
■日本からアメリカへの輸出が多いのはマツダとスバルでメキシコからの輸出は日産が多い
■フォルクスワーゲンやステランティスなどもメキシコから多くの台数をアメリカに輸出している
アメリカメーカーも窮地に立たされるトランプ関税
第二次トランプ政権によって、自動車産業界が大きく揺れている。国外からアメリカへ自動車を輸入する際の関税を、25%にするというからだ。現在、自動車や自動車部品をアメリカに輸出する際の関税は、基本的に2.5%。つまり、関税が10倍に跳ね上がることになる。
日本からの輸出比率が高いのはマツダやスバルで、それぞれ日本とアメリカ現地生産は半分程度。そのため、今後はアメリカ現地生産に切り替えるモデルが増える可能性が高い。
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一方で、アメリカの隣国メキシコからアメリカへの輸出についても、日本メーカー各社は頭を悩ませている。
日本貿易振興機構(JETRO)によれば、メキシコでの自動車生産総数は2017年の393万台がピーク。2023年はコロナ禍からの需要回復があるものの、半導体不足の影響などにより330万台にとどまった。
メーカー別で見ると、ゼネラルモーターズ(GM)が72万台。そのほか、部品で見ると米テキサス州内工場で最終組み立てする、フルサイズピックアップトラックやフルサイズSUVの車体があるものと考えられる。
次いで多いのが日産だ。2010年代にメキシコ工場が大幅に拡張した際、筆者は現地取材をしている。建設に向けたセレモニーでは、当時のメキシコ大統領が祝辞を述べるために会場入りしたのだが、周囲には機関銃を持った護衛部隊が付き添うという厳重形態体制であったことを思い出す。
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また、日産の工場拡張に伴い、最終組み立て工場近くには、ティア1企業のトランスミッションメーカーや、クラッチ関連メーカーなども進出した。それら工場内をじっくり視察し、日本人関係者とアメリカ市場向けのメキシコ生産事業の重要性について議論した。
そうした取材経験からも、日産がメキシコからアメリカ国内へ生産体制を大きくシフトした場合、ティア1やティア2などのコスト負担が大きな課題となることを予想できる。その場合、日産がティア1、ティア2に対する何らかの補助を行うことが考えられる。
メキシコからアメリカへの自動車輸出は、フォルクスワーゲングループの52万台、ステランティスの46万台、フォードの36万台であり、改めてアメリカメーカーにとってメキシコ生産の重要性がわかる。
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アメリカ、メキシコ、カナダの3国で取り決めている、北米自由貿易協定(NAFTA)に基づき、自動車産業界ではとくに人件費や物価がアメリカより安いメキシコでの生産を活用してきた。それをいきなり、NAFTAがなきものかのような自動車関連25%というのは、日系に限らず自動車メーカー各社にとって極めて大きなハードルだといわざるを得ない。