途中1回給油で500km以上を走れるアシの長さ
そして気になる走りや動的質感は、街乗りの速度域ならいずれのスーパーハイト軽も甲乙つけがたい。純ICEのN-BOXジョイの分が悪いかと思いきや、CVTの制御ごと下支えのしっかりしたスムースさで、痛痒なく素直なドライバビリティが際立つ。スペーシアギアはステアリングの手応えの軽さがそのままフットワークの軽さになっているが、やや細かなピッチングが神経質。
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デリカミニは4WDで重量がかさむぶん、電気アシストが切れるとエンジンが大きく唸るが、ハンドリングと乗り心地のしっとりバランスは好ましかった。
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高速道路にステージを移すと、3車の方向性や個性にまた違いが出てきた。後席の乗り心地は、シートスライド量が多くて視線が高く、後車軸まわりの挙動が落ち着いているデリカミニがいちばん快適といえた。高速巡航でも接地性が薄れる感覚がほとんどなく、基本的なメカニカルグリップがしっかりしていると感じさせる。雪道や悪路ではさらに頼もしいのだろう。
スペーシアギアは高速での直進時、ステアリングの中立付近がやや定まりづらい感触だった。後席では、足もとに備わるマルチユースフラップで座面長を伸ばしたりオットマンにして足を浮かせたり、充実装備にモノいわせ、寛ぎポジションはとりやすい。が、高速巡航中のハーシュネスを足まわりが吸い込み切れず、身体が要らぬ浮遊感に苛まれる。アームレストもあるが、あくまで短中距離移動での道具性が個性で、街なかでのコミューターが本分といえる。
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N-BOXジョイは高速道路でも、街乗り時と地続きの、雑味の少ないスムースライドを感じさせた。合流の局面など中間加速でもっとも扱いやすいのはi-VTEC+ターボだったし、3車中随一のロングホイールベースも手伝ってか、もっともクセの少ない直進安定性、車線変更時のヨーの収まりも自然だ。
ただ、後席の乗り心地もそれなりに快適だが、前席といちばん差があるのもN-BOXジョイで、撥水加工シート生地のせいか、横方向サポートが落ち着かない。逆にいえば前席=ドライバーズシートが、それだけ快適なのだ。
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ただし、走りの面でどのスーパーハイト軽にも共通することは、往復の両日とも冬の寒波で強い北風が吹きつけていて横風に3車ともめっぽう煽られ、しっかりステアリングを保持しての修正舵が必須だったこと。
それでも車線を守れる程度に走れることを賞賛すべきかもしれないが、大の男が着座して握り拳×2ほど頭上が余っていることを思うと、高速移動で要らぬ苦労を背負うことと、何がトレードオフになっているのか、考えさせられる。
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それに第二東名120km/h区間では、やはりというべきか3車とも燃費が目に見えて悪化した。それまでの燃費に比して、約16%悪化したのは4WDかつMHEVのデリカミニ、約14%ほど下がったのがスペーシアギア、約10%にとどめたのがN-BOXジョイだった。
とはいえ大阪を全車満タンで出発して、中間の浜松SAで給油1回、それだけで東京は羽田近くまで3車とも走り切るという、アシの長さは確認できた。
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街なかを多く含む京阪区間での燃費は、走行距離36kmに対しデリカミニが16.1km/L、N-BOXジョイが20.6km/L、スペーシアギアが24.5km/Lと圧倒的だった。ただし、スペーシアギアがほぼひとり乗りで有利だったこともあり、続く高速区間ではドライバー以外の人員を乗せ替えながら、完全イコールでないとはいえ均等化を図って計測した。
東京は羽田に着いた時点で、3車それぞれのトリップメーター走行距離と表示燃費、ガソリン補給量による実測実費は、デリカミニが(518.7km走行、平均14.2km/L、途中給油量18.83リットル・3822円、最終給油量20.64リットル・3756円)、スペーシアギアが(523.4km走行、平均20.2km/L、途中給油量12.96 リットル・2631円、最終給油量15.55リットル・2830円)、そしてN-BOXジョイが(515.5km走行、平均18.9km/L、途中給油量12.29リットル・2495円、最終給油量14.96リットル・2725円)だった。撮影の都合で3車は同じルートとはいえ同じ走行距離を同じペースで走ったわけではなく、表示値を実測の給油量で割れば、誤差ゼロはN-BOXジョイだけで、デリカミニは8%ほど、スペーシアギアは10%ほどサバ読み側に誤差が出ていた。
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いずれにせよ、ルーフレールなしでわずかながら前面投影面積が少なく、ロングホイールベース化の恩恵を最大限に活かしたN-BOXジョイが、大崩れしにくい好燃費を発揮し、過剰な装備機能の‘レス化’を個性に替えて抜きん出た。
アウトドア・タッチで個性あふれるスーパーハイト軽は、すでに省燃費だけで選ばれる対象ではない。だからこそ日常用途プラス近隣への週末レジャーでバイパス道路を走るぐらいが、本来の使われ方だろう。成熟というか飽和し切った軽自動車の不満な点が、いずれトレッドや重心高が限られるがゆえの不安定さに起因していることを鑑みれば、そろそろコミューターとしての軽自動車規格と開発余地は限界といえるだろう。
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軽は必需品だからこそ同程度のユーザーコストで、より都市間移動や高速域でアクティブ&パッシブセーフティが高い、そんな「次世代スーパー軽」的なスモールカー枠を促す税制や仕組みを、大真面目に考えるべきなのだ。