レーシングドライバーがライバル2台を徹底分析! インプレッサWRXとランエボの違いとは? (2/2ページ)

永遠のライバルだけど性格は大きく異なる

 ランエボのACDはステアリングが直進位置で最大拘束力となり、転舵中は切角に応じて拘束力を弱めている。一方、インプはアクセルをオンにすると拘束力が強まり、最初に最大トラクションを与えている。このことから、ランエボは旋回性優先、インプは駆動力優先の制御がなされていることが伺える。実際のコーナーでの挙動には、まさにこうした制御の違いによる動きが現れていて、ランエボはクイックなヨーの立ち上がりを見せ、インプは終始アンダーステアな姿勢になる。

 また、富士スピードウェイのような直線のあるサーキットだと、両車の空力的な姿勢変化も見て取れる。

 インプはエンジンフードの上にエアインレットがあり、そこから空気を取り入れエンジンの真上に配置したインタークーラーを冷やしている。

 ランエボもエンジンフードに穴あけ加工があるが、こちらはエアアウトレットとして機能させられている。インタークーラーはフロント前面に配置し、ラジエターとともに取り込んだ空気で冷却する。そのエアはエンジンフード上面から排出され、入り口と出口のバランスがいい。

 インプは前面からラジエター冷却風を取り込み、エンジンフード上からはインタークーラー冷却風を導き入れる。つまり、冷却風の入り口は2箇所あるのに、出口が設けられていない。そのためエンジンルーム内の圧力が高まり、ストレートを200km/hで駆け抜けるインプはフロントが大きくリフトした状態になる。フラット姿勢が維持できるランエボと大きく走行姿勢が異なって見えるのだ。

 高速域では直線でもコーナーでも同様の姿勢になり、インプは旋回加速が苦手だ。また、ランエボはリヤアクスルのAYC(アクティブヨーコントロール)を備え、旋回力をさらに高めている。ゼロカウンターなど、ランエボらしい旋回特性を引き出すことができるのだ。

 グラベルのラリーやダートラ、駆動力勝負の場面ではインプが強いが、サーキットなどターマックの旋回性ではランエボに長がある。

 こうした特性の違いを理解したうえで、ランエボ・インプの乗りこなしに役立ててもらいたい。


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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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