規制緩和でタクシー車両はなんでもOKに! それでも車種にものすごく偏りが出るワケ (2/2ページ)

「なんでもいいよ」といわれてもタクシーとして使われる車両は偏る

 いまの法人タクシーでは、とくに都内ではどの事業者もほぼほぼトヨタJPNタクシーとなっているが、これはタクシー専用車と呼ばれる存在がJPNタクシーの一択となっていることも大きい。似たようなキャラでトヨタ・シエンタもあるが、こちらは一般的な小売り(マイカー利用)が中心となるので、JPNタクシーと比べるとドアの開閉頻度も異なるなど、タクシーとして使うまでには耐久性に疑問が残ってしまうようである。

「どんなクルマでも好きにタクシーにしていいよ」といわれても、現実的にはなかなかひとつの事業者で、車両調達(リースが多い)の面も含めてバラエティに富んだ車種を用意するということにはならないのである。

 個人所有レベルでは需要低迷期に入ったともされるBEVだが、世界を見ればバスやタクシーといった公共交通機関の電動化のスピードは衰えを見せていない。インドネシアでは最大手のブルーバードタクシーが、全体から見ればまだまだ試験運用レベルだが中国BYDオート(比亜迪汽車)車両が導入されているなか、ベトナムのビンファストが自社タクシー向けBEVを使用する、自社傘下のタクシー会社とともにインドネシアでタクシービジネスをスタートさせている。

 アメリカでは自動運転タクシーの営業運行がいくつかの都市でスタートしているが、この運行主体はプラットフォーマー系となっている。

 香港では従来のタクシー会社のサービスに対する利用者の不満が高いこともあり、車両のBEV化を見据え、電子決済、アプリ配車サービスなど利便性を一気に向上させたいとの狙いもあり、新たに5つの事業者にタクシー事業の認可を与えて運行を開始している。一部事業者ではトヨタや日産のHEV(ハイブリッド車)も併用するようだが、事業者ごとに上海汽車や広州汽車(PHEV[プラグインハイブリッド車]のみ)、凱翼汽車の車両がタクシーとして使われる(上海汽車車両の採用が目立つ)。

 香港のお隣ともいえる広東省深圳に本拠地を置くBYDオートの車両がないのが不思議なのだが、ここからさらに最終的に使用車両が統一されることになるかもしれない。

 日本では現状都市部を中心にLPガスHEVとなるJPNタクシーがタクシー車両の中核を担っている(地方ではまだまだクラウン系タクシーが目立つが)。路線バスでは政府からの補助金交付もあり、まだまだ本格導入まではいっていないものの、試験導入レベルではBEV路線バスの導入が進んでいる。いままでは中国メインの外資系車両ばかりであったが、いよいよ大手日系メーカー製のBEV路線バスが営業運行を開始している。

 ただ、タクシーについては、日本の路線バスにおいてBEVで存在感を見せるBYDオートでも「参入予定はない」といった声を関係者から聞こえている。中長期的には、路線バス同様にタクシー車両のゼロエミッション化は日本でも進んでいくものと筆者は考えている。

 日系メーカーも含め、いわゆる香港方式でゼロエミッションタクシー(あえてBEVにはこだわらない)車両の絞り込みが行われるのではないかと筆者は考えている。

 いずれにしろ、「なんでもいいよ」といわれても、まさに諸般の事情でいつの世でもタクシーとして街を走るクルマはなんとなくでも偏ってしまうようである。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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