この記事をまとめると
■スズキ・フロンクスが起爆剤となりコンパクトクロスオーバーSUV市場が活況だ
■フロンクスとWR-Vとヤリスクロスを比較
■それぞれのモデルが異なる優位性をもっている
インドからやって来たスズキの逆輸入車が大人気
いま、日本ではコンパクトクロスオーバー市場が盛り上がっている。そのきっかけはいくつもあるが、現時点では2024年10月に発売された、「スタイリングを第一に開発し、楽しい走りも重視した」というインド生産の逆輸入車でもある”日本市場専用仕立て”のスズキ・フロンクスがひとつの起爆剤となっている。クロスオーバーSUVは本格的な悪路走行というより、時代の流れに乗ったファッション性をも重視した都会でも乗りやすい(乗降性や視界など)クルマとして注目されているのである。
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フロンクスは254.1万円~という買いやすい価格とともに、どこから見てもスタイリッシュなクーペスタイルが特徴。第一に注目すべきはボディサイズ。全長3995×全幅1765×全長1550mm、ホイールベースが2520mmであり、日本の狭い道での運転のしやすさはもちろん、1550mmの全高から、都市部の立体駐車場への入庫も容易。
パワーユニットは1.5リッターのK15C型直4 。最高出力101馬力/最大トルク13.8kg-m(2WD)の純内燃機関車と、99馬力/13.7kg-m(4WD)にモーター3.1馬力/6.1kg-mを加えたマイルドハイブリッド+6速ATのみの設定で、インド仕様にはない、日本の寒冷地向けの4WDを用意。WLTCモード燃費はFFが19.0km/L、4WDが17.8km/Lとなかなかの数値を示す。最低地上高は170mmとそこそこだが、4WDについてはヒルディセンドコントロール、グリップコントロール、そしてスノーモードと3つの走破用モードとスポーツモードとパドルシフト(FF/4WD)が設定され、オールラウンダーとしての資質も十二分ということになる。
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なお、全車速追従機能・停止保持機能付きACCを、電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能とともに搭載し、全方位モニター用カメラ、リヤクロストラフィックアラート、このクラスとして贅沢なブラインドスポットモニターまで用意しているあたりは、価格を知れば、大サービスと断言できる。
フロンクス同様に、インドで生産されるホンダW-RVもまた、アジアがメインマーケットとなる逆輸入車。ホンダSUVのヴェゼルと比べ、よりクロスカントリーテイストを強めたエクステリアは全長4325×全幅1790×全高1650mm、ホイールベースは2650mm。ヴェゼルが全長4340×全幅1790×全高1590mm、ホイールベース2610mmだから、全長、全幅はほぼ同じ。全高がSUVらしく60mm高く、ホイールベースに至ってはクラス最長のヴェゼル比+40mmとなる。
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ヴェゼルに対してこちらはクロスカントリーテイストあるイカツいデザインだけに、実際にはコンパクトなサイズながら、スマートで低全高のヴェゼルより立派に見えるのも本当だ。
その価格は200万円台前半からと、軽自動車のターボモデルに匹敵するリーズナブルさ。それは1.5リッター直4DOHC(i-VTEC)のガソリンエンジン、118馬力・14.5kg-m+CVTのみの設定で、駆動方式もFFに絞り込んだ企画の成果といってよく、まさにバリューフォーマネーを前面に押し出した1台といっていいだろう。
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その価格を実現するために、全車速追従機能・停止保持機能付きACC、電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能の搭載は見送られている。
このジャンルの先駆者とも呼べるのが、204.6万円~というリーズナブルさも際立つトヨタ・ヤリスクロス。トヨタのコンパクトカー、ヤリスをベースに仕立てられたコンパクトクロスオーバーSUVという位置づけで、ボディサイズは全長4180×全幅1765×全高1590mm、ホイールベース2560mmと、フロンクスやWR-Vよりやや小柄。
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が、ただヤリスをクロスオーバー化しただけではなく、ヤリスとパワーユニットやCVT、ホイールベースなどを共用するものの、リヤオーバーハングを延長し、アウトドアライフなどで不可欠な大きな荷物を積載可能とする大容量かつ使い勝手のいい荷室を実現。さらに最低地上高170mmとともに、けっこう本格的な4WD機能さえ備えているのだ。
パワーユニットは、120馬力・14.8kg-m、WLTCモード最高燃費19.8km/Lの3気筒1.5リッターガソリンエンジンと、EVモード付の1.5リッターエンジン+2モーターのHVで、こちらは91馬力・12.2kg-m+フロントモーター80馬力・14.4kg-m、リヤモーター5.3馬力・5.3kg-mの2タイプをCVTと組み合わせている。
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駆動方式は2WDと4WDを揃え、4WDはマルチテレインセレクトのMUD & SAND、ROCK & DIRTが加わる本格派。HVの場合、2WDは電気式4WD=E-Fourを採用するものの、ガソリン車の4WDは機械式となり、悪路走行を楽しみたいなら、最低地上高170mmとはいえ、ガソリン車の4WDが優位になるはずだ。
また、今回、比較した3台のうち、ストロングハイブリッドモデルを用意するのはこのヤリスクロスのみで、アウトドアや災害時に活躍してくれるAC100V/1500Wコンセント(4万5100円)がオプション設定されるのもヤリスクロスのみとなる。
先進運転支援機能(やコネクティッド機能)は3車ともに充実しているが、トヨタ車の特徴として、このヤリスクロスのHV車には運転リスクを先読みしてくれる「プロアクティブドライビングアシスト」が標準装備されている点に注目だ。歩行者の横断、飛び出しを先読みしてサポートしてくれるほか、先行車や前方のカーブに対して減速操作をサポート(ACC不要。一般道でOK)してくれるなど、日常的な運転シーンでの安心・安全をアシストしてくれるのである。