登録車はトヨタが盤石の一強体制
登録車のみのランキングでは、トップ10のうち8車種をもトヨタ車が占めている。国内販売、そして世界販売でもそのボリュームがかなり高いトヨタでは、年単位での納車待ちは一部の人気車種に限定されるようになった代わりに、新規受注停止が全般の車種にわたって頻発している。
いっぽう、トヨタ以外のメーカーでは、生産途中や予定車種にディーラーが「唾をつけて」おき、それを販売していくことで可能な限り短納期を実現するという動きに注目だ。これをトヨタ車に対する最大の武器にして、コロナ禍前のような事業年度末決算セールを展開するブランドが目立つのである。
各メーカーが期間限定の超低金利ローンを用意するといった消費を刺激するプロモーションを用意しているのだが、結果的には「トヨタ一強」に拍車がかかっているような統計結果が続いている。登録車のみの統計において、トヨタ以外のメーカー車でかろうじてトップ10入りしているのは、日産ノートとホンダ・フリードのみなのだ。
ホンダ・フリード クロスターとエアー画像はこちら 日産ではノートが数少ない量販が期待できるモデルとなっているし、フリードも宿敵シエンタに販売台数で負けているものの、いまやホンダにおいては軽自動車のN-BOXとフリードが販売主軸といっていい存在となっている。これが働き手不足などによる影響なのかはわからないが、幅広く新車を販売するトヨタとの決定的な販売体制の違いが見てとれる。
さて、2024年3月末に正式発売となり、その後ヒットモデルとなったホンダWR-Vに話題を移そう。WR-Vは、2025年3月6日(木)に一部改良を行っている。改良内容をみると、中間グレードのZや上級グレードのZ+の魅力を増すような内容の特別仕様車が追加されていることがトピックだ。なお、廉価グレードのX、Z+は2025年夏ごろ発売予定ということで、改良モデルの価格や諸元は本稿執筆段階では公表されていない。
一部改良後のホンダWR-V画像はこちら デビュー時には209万8800円という軽自動車並みの価格もありヒット車となったWR-Vだが、ここのところは息切れムードが目立っている。本稿執筆段階ではZR-Vと並び0.9%という超低金利ローンキャンペーンを展開して販売にテコが入れられている。しかしながら、2025年2月単月の販売台数は2966台なので、月販目標3000台はほぼ維持していることになる。
いっぽう、WR-Vの好敵手となるスズキ・フロンクスの販売台数は、月販目標1000台に対し1527台となっている。
スズキ・フロンクスのフロントスタイリング画像はこちら さて、以前ホンダディーラーで話を聞いたところでは、「トヨタ・ライズのようなモデルがほしい」という販売現場からの声に応えたという側面もあるようだ。そのライズであるが、WR-Vやフロンクスが3ナンバー車であるのに対し5ナンバーサイズという決定的な違いはあるものの、2025年2月単月だけでは6793台(登録車のみで8位)となっている。
ライズはダイハツの不正試験問題を受けて、2023年半ばから生産を停止していたという経緯をもつ。その後、ガソリンで2024年3月、HEV(ハイブリッド車)では同年7月に出荷再開となった。2024暦年(1月から12月)締めでのライズの年間販売台数は5万1225台(月販平均台数約4268台)となり、2019年デビュー時の月販目標台数を上まわる販売実績を残しており、生産停止というハンデをものともせずヒットモデル街道を突き進んでいるのだ。
トヨタ・ライズのフロントスタイリング画像はこちら WR-Vもフロンクスも海外生産モデルとはいえ、品質はもちろん問題なく、装備内容や質感、そして価格設定など魅力あふれるモデルなのだが、「怪物」ともいえるライズの地位は依然として揺るぎないものとなっているのが現状だ。
物価高騰などが家計を直撃するなか、将来へのさまざまな不安も募り、新車の販売環境はけっしてよいものとはなっていない。そのなかではあえて冒険するよりも、「日本一売れている」といったネームバリューや知名度、そして再販価値の高さといった不安要素の少ない安定株かどうかを新車購入時に重視するユーザーが目立ち、トヨタ一強がより鮮明となってきているのかもしれない。