イザというとき避難所になる装備と室内! 「災害に強いクルマ」の実名 (2/2ページ)

車中泊避難場所として活躍してくれるクルマ

 では、具体的にどんなクルマが、災害時の緊急避難シェルター、車中泊避難場所として使うのに適しているのだろうか。まずは室内空間のゆとりがあり、天井も高いボックス型ミニバンのハイブリッド、それもAC100V/1500Wコンセントが付いている(付けられる)モデルだ。

 たとえば日産セレナe-POWER、トヨタ・ノア&ヴォクシーHVがその筆頭で(ホンダ・ステップワゴンはe:HEVモデルでもAC100V/1500Wコンセントの用意なし)、とくにセレナは現行型で初めてe-POWERモデルにAC100V/1500Wコンセントが用意され、全車最大8人乗りの2列目席がベンチシート&キャプテンシートアレンジ自在のシートレイアウトを備え、なおかつ2/3列目フラットアレンジ時のフラット度と寝心地に極めて優れているところが推薦したい理由だ。

 実際、2/3列目席のフラットアレンジで実測全長約2150mmものベッド長が得られるセレナの寝心地は、それこそマットレスなしでも快適なほど。ベッド化したスペースの下に、大容量の荷物収納スペースが出現する点も、ボックス型ミニバンのシートアレンジで使いやすいポイントとなる。

 ノア&ヴォクシーの場合は購入時に2列目キャプテン、ベンチシートの選択が必要になり、普段の居心地がいいキャプテンシートを選んでしまうと(現行型は横スライド機構が廃止されベンチシート化ができない/先代は横スライドOK)、2/3列目席フラットアレンジによるベッド化をする際にキャプテンシートならではのシート形状からフラットさが一部損なわれ、またキャプテンシート左右に隙間ができてしまう不都合があるかもなのだ。

 アウトドアライフでも大活躍してくれる、悪路にも強いSUVでは、三菱アウトランダーPHEV、日産エクストレイル、トヨタRAV4 HVなどがお薦めだ。いずれもPHEV、HVモデルにはAC100V/1500Wコンセントが用意され、電源付き災害用シェルターとしての機能を満たし、いずれもシートアレンジによって1850~1950mm程度の長さのベッド長が確保される。

 しかも、本格SUVらしく4WD×最低地上高の余裕によって、万一、クルマで緊急避難移動する際の走破性という点でも心強いのである。

 と、ここまではある程度の大きさ、それなりの価格の災害時に緊急避難のためのシェルターになりうるAC100V/1500Wコンセントが用意される電動車を紹介してきたが、「そこまでの大きさ、価格のクルマはわが家には必要ない……」というユーザーに適した災害時の緊急避難のためのシェルターになりうるコンパクトで比較的廉価なクルマも存在する。

 その1台がトヨタ・シエンタHVの2列シートモデルだ。コンパクトなボディ、全長ゆえ、シートアレンジで得られる最大ベッド長は実測1670mmだが、筆者のウルトラスーパーグッドアイディアであるヘッドレストを逆付けして枕代わりにすることで、枕部分を含むベッド全長は1760mmに達する。しかも、ライバルのホンダ・フリードに依然として用意されないAC100V/1500WコンセントをHVモデルにオプション(4万5100円/税込み)で付けることができるのだ。

 さらに、コンパクトでリーズナブルな軽自動車でも、AC100V/1500Wコンセントの装備こそ望めないものの、スズキ・ハスラーは前席の背もたれをほぼ水平まで倒し、後席とつなげることで、なんと2040mmもの長さのそれなりにフラットなベッドスペースが出現。

 じつは、それこそパッケージ上の車両開発の狙いでもあり、そのため前席のシートサイドサポートを、フラットアレンジのために削っているほどなのである。

 純正アクセサリーには、リラックスクッションなるジャストサイズのマットレスやすべてのウインドウを覆ってくれるプライバシーシェードも揃っているから、快適に寝られ、プライバシーが守られる車内空間が実現することになるのだ(※クッションやシェードは多くの自動車メーカーの車種にアクセサリーとして用意されている)。

「災害時の車内避難中に車内がベッドスペースになるだけでなく、テーブルと椅子のあるリビング、仕事スペースも必要……」というなら、これまたスズキの乗用版のスペーシアをベースに軽商用車化したスペーシア ベースがある。

 標準装備のマルチボードによって実測1740mmのベッドにもなるフラットスペース(純正アクセサリーのリラックスクッションなどは不可欠)のアレンジが可能。さらに、マルチボードを上段にセット(ボード下の収納スペースの高さ435mm)して後席を格納すれば、マルチボードがテーブルに、格納した後席部分がベンチタイプのふたりがけの椅子となり、テーブル席に変身。バックドアを開ければオープンテラス席として使え(バックドアがおおきなひさしとなり雨天OK)、食卓、ワークデスクとして使うにもぴったりなのである。

 ちなみに停電時には使えないが、純正アクセサリーとして外部電源ユニットが用意され、自宅やキャンプ場の電源付きサイトからスマートにAC100V電源を車内の引き込むことができ(窓やドアを少し開ける必要なし。専用取り込み口がある)、車内で1500Wまでの家電品を使うこともできるのだ(HVやPHEVにある自己完結型のAC100V/1500Wコンセントとは意味合い、使い勝手が異なるが)。

 そのほか、輸入車ではミニバン×SUV×ワゴンをかけあわせたパッケージが魅力の、アウトドアにも似合うシトロエン・ベルランゴと兄弟車のプジョー・リフターも車中泊に適したクロスオーバーモデルで、オプションの「agreベッドキット」という専用のベッドキットを使えば、2列シート、標準ホイールベースモデルでも、シートアレンジによって車内を幅1200mm、全長1800mmのベッドスペースに変身させられるのである。天井高は890mmもあり、寝るだけでなく、お座敷として座ることも可能となる(身長、座高による、AC100V/1500Wコンセントの装備はなし)。

 とはいえ、上記のような車内が災害時の緊急避難シェルターとして理想に近いクルマを所有していなくても、いま乗っているクルマをアイディア次第で活用することも可能だ。実際、わが家ではステーションワゴンにさまざまな工夫を施している。具体的には後席~ラゲッジルーム部分のラゲッジカバーの下に、快適に寝られるようにクッション材を敷き詰めており、床下収納に最小限の災害用品を積載している。

 なお、トヨタでは「車中泊避難ガイドブック」をPDFで用意しているので、こちらも参考にしていただきたい。


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青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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