この記事をまとめると
■災害時に車内が緊急避難シェルターになりうるクルマがある
■国産ミニバンやSUVは多彩なシートアレンジと充実装備で快適な避難生活を送れる
■軽自動車でもハイトワゴンやスーパーハイト系ならフルフラットレイアウトを実現できる
災害時にクルマはプライベートな避難所として活躍してくれる
災害・地震大国の日本では、災害、地震がいつ起こるかわからない。家が損傷、倒壊しても、運よくクルマが無事であれば、車内は緊急避難シェルターになりうる。つまり、プライバシーが守れ、寒い時期は暖を取れ、暑い時期はエアコンの利いた涼しい空間で過ごせ、ラジオやナビゲーションに付随するTVから情報収集することもできるし、シガーソケットやUSBソケットがあれば、これまた情報収集や連絡などに不可欠なスマートフォンの充電もOK。車種によってはシートアレンジで車内をお座敷化、ベッドルーム化することもでき、大人だって真っすぐに寝ることも可能になるのである。
フルフラットにしたラゲッジでのアウトドアライフ画像はこちら
大災害の場合、「避難所があるじゃないか……」とも思えるが、何らかの事情で(ペットとの同伴避難、徒歩での移動が困難な人など)、開設された避難所に移動できない場合(あるいは避難所の開設前)、車内は家族揃って使える緊急避難所になるわけだ。
3.11東日本大震災で被災した経験のある筆者家族も愛犬と暮らしているため、災害時の避難プランのひとつとして、車内避難(車中泊避難)を念頭に準備しているところである。
スズキ・スペーシア ベースのアレンジの一例画像はこちら
平成28年の熊本地震では、内閣府(防災担当)によると、避難者が避難先として、回答者全体(複数選択可)の74.5%が車中泊を経験したと回答。避難所と回答した45.3%を上まわっていたというデータもある。
その理由としては、「余震が怖くて避難所に避難したくなかった。避難所が満員で、トイレも食事も長蛇の列でいられなかった。年老いた祖母と幼い子がいたため、避難所には行けなかった。ペットがいるため避難所という選択肢をもてなかった。空き巣などが気になった、クルマに積載してある財産管理のため……」などがあったという。コロナ禍のような状況下であれば、さらに避難所に滞在することをためらう人たちが出てきたかも知れない。
しかも、ハイブリッドやPHEVに用意されるAC100V/1500Wコンセントがあれば、車内外で家電品を使うことができ、湯沸かしポット、簡易電子レンジ、電気ひざかけ、充電式湯たんぽ、照明などの使用、ノートPCの充電もOKだ。つまり、クルマは災害時の生死を分ける、ひとつのプライベートな避難場所になるということでもある(延長コードを使えば家のなかに電源を引くこともできる)。
湯沸かしも可能なAC100V/1500Wコンセント画像はこちら
ただし、どんなクルマでも車内が理想に近い緊急避難場所になるとは限らない。以前の熊本地震、新潟県中越地震での報告にもあるように、さまざまな理由で車内避難を余儀なくされた人のなかで、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症/肺塞栓症)を発症し、なかには死に至ったケースもある。エコノミークラス症候群は狭い車内のシートに座ったままの姿勢(足を動かさない姿勢)でいることで発症するリスクが高まるといわれているのだ。
トヨタの「車中泊避難ガイドブック」より画像はこちら
つまり、ここではキャンピングカーは別として、前後席、または後席と荷室、ミニバンの2/3列目席のシートアレンジで、フラットな床面、ベッドスペースがアレンジでき、ゆったり足を伸ばせるスペースを確保できるクルマが、そうした場面では理想的といえるのだ(アウトドアや車中泊でも)。フラットアレンジ時の全長(ベッド長)に関しては、利用者が真っすぐ横になれるかどうかも重要だろう。また、4人家族でフラットアレンジ時のシート幅(ベッド幅)がたとえふたりしか横になれないスペースだとしても、家族が交互に横になって休めばいいわけだ。
トヨタ・ノア&ヴォクシーのフラットアレンジ画像はこちら
そう書くと、「車内が快適なお座敷、ベッドスペースになるのは大型ミニバンだけの話でしょ……」と勘違いされそうだが、さにあらず。軽自動車でもハスラーのようなハイトワゴン、N-BOX、スペーシアに代表されるスーパーハイト系でも、車内のフラットアレンジは可能だ。
車内を緊急避難シェルターとして使う場合の基本的な装備としては、エアコン、ラジオ、そして何といっても災害時の情報収集、連絡手段となるスマートフォンの充電に必要なUSBコンセント。最近のクルマには標準装備されていることがほとんどだが、もしなければ、シガーソケットに装着するUSBソケットを用意すればいい。それがPD規格であればPD対応の機器を短時間で急速充電することができるからお薦めだ。クルマに装備されているUSBコンセントはタイプCであってもPD規格ほどの急速充電はできないからである。
電子機器の充電に役立つUSBポート画像はこちら
ハイブリッドやPHEV車に用意されるAC100V/1500Wコンセントも、繰り返しになるが、車内外の電源確保という意味で、あると絶対に便利で助かる。
家電を使用できるAC100V/1500Wコンセント画像はこちら
オプション設定の場合は、ぜひとも付けたい装備といっていい(アウトドアや車中泊でも大活躍する)。