群雄割拠の軽自動車のなかに時折登場するスター! 時代を作った「軽の名車」を振り返る!! (1/2ページ)

この記事をまとめると

■日本のモータリゼーションに欠かせない軽自動車だがその規格は何度も変わっている

■規格の変遷や時代の流れに合わせてさまざまな名車が生まれてきた

■現在はスーパーハイトワゴンが隆盛を極めているが未来のトレンドにも注目だ

軽自動車の黎明期を支えたモデルたち

 インフレ時代において、庶民の所有できる「軽自動車」は日本のモータリゼーションに欠かせないジャンルとなっている。

 そんな軽自動車における日本初のモデルとされているのが、日本オートサンダル自動車が1952年に販売開始をした「オートサンダル号」だ。この当時の軽自動車規格は、全長3.0m、全幅1.3m、全高2.0m、エンジン排気量360cc(4サイクル)/240cc(2サイクル)というもので、オートサンダル号は全長2.8mと、規格より小さいサイズだった。

 その後、1954年にエンジン排気量が2サイクル、4サイクルともに360cc以下と規格が変更されたことで、軽自動車は最初の全盛期を迎えることになる。というよりも、軽自動車というカテゴリーが日本の自動車メーカーを育てたといっても過言ではない。なにしろ「360cc軽自動車」時代に、四輪車メーカーとして異業種から参入してきた会社は多いのだ。

 そのひとつが鈴木自動車工業だ。もともと鈴木式織機という車名で織機を製造していた同社は、二輪車の生産に携わるようになり鈴木自動車工業と改名していたが、量産四輪車として最初のモデルは1955年に発売したFFの軽自動車「スズライトSS」であった。いまも“小さなクルマ”の印象が強い同社の原点は、360cc時代の軽自動車にあったのである。

 しかしながら、360cc軽自動車をニッポンの国民車として普及させたのは、スズキではなかった。この規格を代表するモデルとして見逃せないのが、富士重工業(当時)が1958年に発売した「スバル360」だ。

 航空機メーカーをルーツにもつ富士重工業が最初に開発を進めていたのは排気量1.5リッタークラスのセダンだったが、紆余曲折あり、結果として360cc軽自動車の規格をフル活用したスバル360によって四輪車事業に参入することになった。

 モノコックボディ、リヤに2気筒空冷2サイクルエンジンを搭載したスバル360が大ヒットした理由は、ファミリーカーとして使えるパッケージにあった。

 21世紀の視点からすると、全長3.0m、全幅1.3mというボディは小さすぎるが、RR(リヤエンジン・リヤ駆動)レイアウトを取ることでキャビンの有効スペースを確保するパッケージは素晴らしく、スバル360が存在していたからこそ「軽自動車はファミリーユースに使える」というユーザーの認識を生み出したといえる。日本のモータリゼーション史にも欠かせない名車中の名車といえるだろう。

 そんな360cc軽自動車時代には、マツダが「R360クーペ」や「キャロル」、スズキ「フロンテ」、三菱「ミニカ」、ダイハツ「フェロー」など、いまも馴染みのあるブランドから多くの軽自動車が生まれているが、やはり時代を変えたモデルとして忘れえないのはホンダ「N360」だろう。

 排気量360ccを上限とした軽自動車規格は1975年まで続くことになるが、その前半を象徴するモデルがスバル360だとすれば、後半期に輝いたのがN360だ。事実、それまで軽自動車の販売トップだったスバル360から王座を奪取している。

 1967年に誕生したホンダN360は、空冷4サイクル2気筒エンジンをフロントに積んだFF車で『Nコロ』という愛称で親しまれたモデル。現在のハッチバックスタイルのファミリーカー像を作ったともいえる。

 360cc時代の軽自動車が国民車として普及した背景には、車検不要という手軽さもあったが、1972年の法改正により軽自動車も車検が必要となった。そうしたなかで、1976年1月より軽自動車の規格が新しくなった。最大のポイントはエンジン排気量が550ccまで拡大されたことで、あわせてボディサイズも全長3.2m、全幅1.4m、全高2.0mと、全高以外が大きくなっている。

 この550cc軽自動車時代において、主要プレイヤーの顔ぶれが変わった。360cc軽自動車時代にはスバル(富士重工業)やホンダのモデルが売れていたが、ここからはスズキやダイハツの存在感が増すようになった印象がある。

 360ccから550ccとなり商品力があがったのだから軽自動車はさらに人気を博したと思いがちだが、前述した車検制度の導入や日本経済の成長などにより軽自動車の人気は落ち込んでいた。軽自動車より小型車がファミリーカーの主役となっていったのだ。


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山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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