この記事をまとめると
■ミッドシップスポーツカーの4人乗りは意味があるのか疑問視される
■過去にはランボルギーニ・ウラッコやフェラーリ・モンディアルなどが存在
■最新のケーニグセグ・ジェメラは贅沢なスペックで4人乗りを実現
ミッドシップなのに4人乗りというナゾ
ネット上の質問で「ミッドシップスポーツカーで4人乗りというのは意味があるのでしょうか」という、なかなか興味深いものを目にしました。たしかに、運動性能を高めようと、重量物であるエンジンを車体中央(ミッド)に載せたのに、4人乗ればそれだけ慣性モーメントは増大してしまい、エンジニアの目論見は水の泡。意味があるかないかでいえば、まったくの無意味に違いありません。
が、世の中には厳然と4人乗りミッドシップカーが存在します。おそらくは、この「無意味」を「贅沢」と解釈したはずの4台を振り返ってみましょう。
ランボルギーニ・ウラッコ
1970年代に入ると、ポルシェ911やマセラティ・メラクといった2+2スポーツカーが存在感を高めはじめました。折しも、フェルッチオ・ランボルギーニが率いる猛牛ブランドは財政の立て直しを迫られており、それまでのスーパーカー大好き路線に2+2を加えざるを得なくなっていたのです。
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そこで、信頼のおけるエンジニア、パオロ・スタンツァーニに「ミッドシップの2+2、4人乗れるクルマ」の開発を命じ、スタイリストはカウンタックに引き続きマルチェロ・ガンディーニをブッキング。1973年に発売されたのが、こちらのウラッコにほかなりません。
全長4249mmに対し、ホイールベースは2450mmとかなり短めで、スタンツァーニはミッドシップの運動性能をさほど犠牲にすることなく4人乗りを実現してみせたのです。
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もっとも、リヤシートはカタチこそシートっぽい形状をしていますが、短いホイールベースのおかげでちびっ子すら窮屈に感じる狭さ。実質的には、ちょっとした荷物置き場といったところ。この点をスタンツァーニに問い詰めたいところですが、さすがの天才にしても「苦肉の策」だったのかもしれません。
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フェラーリ・モンディアルt
ウラッコと同じく1973年にフェラーリは4人乗りミッドシップスポーツカーの208/308GT4をリリースしていますが、ここでは1980年に後継モデルとして登場したモンディアルをご紹介しましょう。なぜなら、ウラッコや208/308GT4はエンジンを横置きしていましたが、モンディアルはモデル後期(1989年〜)には縦置きへとグレードアップ。4人乗りながら、より運動性能の向上を図ったものとされています。
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が、実際にはこのあとに発表されたフェラーリ348と同じ搭載方法が採用されており、イタリアの口さがないメディアは「モンディアルで348の事前テストをしたかったのだ」などと噂していましたっけ。もっとも、リヤシートはウラッコに勝るとも劣らない狭さですから、2+2という詭弁じみた呼び方がふさわしいかと。
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また、フェラーリが作る4人乗りミッドシップという「贅沢感」がウケたのか、208/308GT4、モンディアル合わせて2万台以上を売り上げています。が、自身も凄腕の乗り手だったルカ・モンテゼーモロ社長によってミッドシップ4人乗りは生産中止。
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以後のフェラーリの2+2はすべてFRレイアウトでしたから、ルカ社長としても、売れたとしても「意味のないクルマ」を避けたかったのかもしれません。