この記事をまとめると
■スバル・クロストレックS:HEVで1000km無給油チャレンジを実行
■カタログ値に近い数値を記録し無事に1000km走ることに成功した
■給油回数が減るなどのメリットが光るので長距離ドライブにピッタリなクルマだ
スバル初のストロングハイブリット車両で1000km走ってみた
スバルの新型クロストレックS:HEVは、従来モデルから大きく進化した。特筆すべきは燃料タンク容量だ。これまでのICEモデルやマイルドハイブリッドモデルが48リットルだったのに対し、このストロングハイブリッドモデルでは63リットルまで拡大されている。
スバル・クロストレック画像はこちら
さらに、WLTCモード燃費は18.9km/Lを記録。単純計算で、航続可能距離はじつに1190.7km(63リットル× 18.9km/L)に達する。これは理論値とはいえ、1000kmの大台を軽くクリアする数字だ。果たしてこの数値は実走行でも達成できるのか。その可能性に挑戦すべく、私は1月某日、東京にあるスバル恵比寿本社からチャレンジをスタートした。
出発時刻は午後4時。冬季の長距離走行に備え、20リットルの携行缶とスノーソックスを積み込んだ。出発時点での総走行距離は4400km。トリップメーターを0kmにリセットし、この壮大なチャレンジがスタートした。
スバル・クロストレックS:HEVのメーター画像はこちら
長距離チャレンジの幕開け
出発時の東京は雨。夕刻の渋滞に揉まれながら渋谷ICから高速へと入る。目指すは西、はるか彼方の下関だ。じつは目的地の選定には明確な理由があった。クロストレックには冬用タイヤを履いていないため、積雪地域は避けねばならない。そこで東京から西方面へと目を向けたところ、ある場所が浮かび上がった。
恵比寿本社から距離を測ると、なんと999km──。その地点こそ、山口県下関市の「唐戸市場」である。以前の日本1周の際に感動した海の幸の味が忘れられず、2度も足を運んだ思い出の場所だ。この絶品の海鮮を目指し、1000kmチャレンジの終着点とすることを決めた。
1000kmドライブのルート画像はこちら
ただし、16時出発の今回のチャレンジ。下関まで一気に走破するのは体力的にも懸念が残る。そこで初日は、ルート上の神戸市・京橋IC付近での宿泊を決断。高速を降りてすぐの好立地に、多くのホテルが点在しているためだ。恵比寿から神戸のホテルまでは518km。ちょうど全行程の半分地点となる。
新東名高速を選び、アイサイトXを起動しての走行が始まった。
終始強い雨が降り続くなか、システムは一度も途切れることなく安定して作動。とくに渋滞時のハンズオフ機能は、0-50km/hでの自動運転を可能とし、長距離移動での疲労を大きく軽減してくれる。さらに、高速道路でのカーブ前には自動で最適な速度まで減速してくれる「カーブ前速度制御」も心強い味方となった。最新の運転支援システムに見守られながら、濡れた路面を西へと進む。クロストレックS:HEVは、果たして1000kmの壁を突破できるのか。その答えを求め、雨音をBGMにクルマは闇のなかを駆け抜けていく。
時計が23時を指すころ、神戸のホテルに無事到着した。
スバル・クロストレックS:HEV画像はこちら
雨はようやく止み、一息つきながら、この日の走行データを確認する。
走行距離は514.6km。ここまでは順調に思えたが、平均燃費のデータに目を疑った。17.5km/L。WLTCモードの18.9km/Lを下まわるこの数値に、少なからぬ不安が頭をよぎる。そして何より驚愕したのは、メーターに表示された残りの航続可能距離だ。わずか440km。
単純計算で今日走った距離と合わせても954.6km。1000kmに届かない!
スバル・クロストレックS:HEVのメーター画像はこちら
「これはやばい……」。
雨天と渋滞の影響か、想定よりも燃費が伸びていない。このままでは目標達成は危うい。明日は何としても挽回しなければならない。
神戸の夜景画像はこちら
2日目のスタート – 燃費との攻防
朝7時30分、神戸のホテル駐車場を出発。昨日の反省が頭をよぎる。最終チェックイン時間の24時に間に合わせるために新東名高速の120km区間での快調な走りが、思いのほか燃費を犠牲にしてしまった。
「今日は基本80km/hでいこう」
神戸から唐戸市場までは残り495km。ところが、朝のアイドリングだけで残り航続可能距離は430kmにまで減少している。単純計算ではもはや到達不能の数字だ。
燃費を意識してエアコンを切って走ろうかとも頭をよぎったが、ここで考え直した。「実際のオーナーは、こんな燃費を極限まで気にした走りはしないだろう」。一般ユーザーの日常使用を想定するなら、必要な装備は使うべきだ。そう判断し、エアコンは通常通り使用することにした。
スバル・クロストレックS:HEVのインパネ画像はこちら
山陽自動車道へと入り、西へと進路をとる。通常の高速巡航速度よりもやや抑え目の80km/h。左車線を走っていると前方を走るトラックなどに詰まり、巡航していくと75km/hくらいでさらに控えめの走りのときもあった。最初は物足りなく感じたが、意外にもこの速度域でクロストレックS:HEVは心地よい走りを見せる。ハイブリッドシステムが効率よく作動している証拠だろうか、燃費計の数値が少しずつ改善していくのが見て取れる。
こうして2日目の走行が始まった。果たして、唐戸市場という目標は達成できるのか。