この記事をまとめると
■トラックにはさまざまなタイプのものが存在する
■なかなか目にすることのできないレアな車両もある
■今回は強力吸引車について詳しく解説する
さまざなまものを吸引することができる
トラックは従来荷物を載せて運ぶクルマであるが、さまざまな架装をすることによって幅広い用途をもつことができる。冷凍車、ダンプ、タンクローリー、パッカー車(塵芥車)などは、よく街なかで目にしているから用途も理解できるが、なかには何に使用されるのかよくわからない車両も存在する。たとえば、特種用途車。この車両は使用目的が限られているので、新幹線のドクターイエロー並にレアなものが多数あるのだ。
そのひとつがバキュームカーである。昭和世代ならすぐに頭に浮かぶが、平成・令和世代にはあまりなじみがないのではないだろうか。確かに昨今、街なかでその姿を見ることはほとんどない。なぜなら、この車両のおもな用途は屎尿の汲み取り、運搬だから、下水道が発達した都市部ではほとんど使われなくなったからだ。郊外なら浄化槽を使用する地域もあるので、そういった場所なら定期的に走行していることがある。もっとも、屎尿だけではなく汚泥、廃油、溢水などを扱う専用車(汚泥吸引車)もあるので、街なかでもまったく見なくなったわけではない。
このバキュームカーに少し似た形をしている車両が存在する。それが、強力吸引車だ。この車両もバキュームカー同様、車体後方に大きなタンクを搭載している。違うのは、キャビン後方に比較的大きな機械部分(ブロアポンプなど)があることと、円柱型のタンクを搭載していることだ。バキュームカーのタンクは、楕円柱がほとんどである。
強力吸引車画像はこちら 両者はともに対象物を吸引、タンクに搭載して運搬する特種用途車であるが、吸引力に大きな差がある。強力吸引車はその名のとおり、バキュームカーを大きくしのぐ吸引力を持っている。これは、吸引方法の違いによるものだ。バキュームカーは真空ポンプを使い、タンク内を減圧することで対象物を吸引する。これに対して、強力吸引車はブロアポンプで起こした空気の流れを利用して、対象物を吸い込むという、掃除機と同じ原理を使ったメカニズムになっているのだ。
強力吸引車は、その性能から吸引対象物の範囲が広い。汚泥や粉末はもちろんのこと、砂や砂利程度であれば固形物でも大量に吸い込むことができるのだ。そのため、工場の配管清掃、煙突清掃、側溝清掃、水路や河川の浚渫、浄水場などの沈砂回収、下水管清掃など、幅広い用途で活躍している。
東京消防庁では、土砂崩れなどの大規模災害が発生し、現場が汚泥や砂などで満たされて重機が進入できないときに、「工作車」として出動するために保有している。たとえば、建物内、槽内、立坑内などといった救助活動が困難な場所では、最大100mの吸引ホースを使用。救出の妨げになる土砂、砂、泥、瓦礫などを吸引し、救助の道を開いているのだそうだ。
東京消防庁の工作車画像はこちら タンクを搭載してホースを持つという、バキュームカーや強力吸引車に似た車両で、機能が真逆の特種用途車もある。それが高圧洗浄車だ。タンクには水が入っており、それをブランジャーポンプ(高圧水ポンプ)で吸い込むのではなく噴出するのだ。一般人から見れば、どれもトラックにタンクを載せた車両にしか見えないかもしれないが、いずれも技術の粋を集めた高性能な車輌でなのである。