タイヤが変わりF1に必要なポイントも1段階引き上げ
そのほか、横浜ゴムがワンメイク供給するADVANレーシングタイヤは、再生可能原料およびリサイクル原料の比率を開発当初35%を目標としていたものが、実際には46%へと大幅に高められて全戦に投入されることとなった。レースのエンターテイメント性を維持しながら、カーボンニュートラルに向けた取り組みを並行して行うスーパーフォーミュラとしては、革新的な一歩といえる。

また、F1参戦に求められるFIAスーパーライセンスポイントが最大35ポイントへ引き上げられた。これは、スーパーフォーミュラの価値が認められた結果であり、今後ますます海外からシリーズに興味を示す強豪ドライバーが増え、シリーズの競争レベルが向上するものと予想される。
金曜フリー走行の復活がもたらすマーケティング効果に期待
一方、マーケティング面に目を移すと、新たに4名の海外勢ドライバーが参戦することから海外マーケティングを強化。VIP向けホスピタリティの利用やプレミアムな体験機会が得られる100万円のゴールドパスをはじめとした富裕層向けビジネスの強化も図られる。欧米でとくに顕著だが、レース会場というのは観客席側とパドック側では世界が異なり、パドック側は「大人の社交場」なのだ。
だからといって従来のファンを置き去りにはしていない。JRPが従来から取り組むファンが友人・知人を連れて行きやすい環境づくりや、ヒューマンモータースポーツとしての露出、そしてSNSやデジタル配信(今季からはDAZNとFODでも視聴可能だからF1ファンにもリーチする)も巻き込んだ「にわかファンづくり」に、SFgoアプリを通じた無線・オンボード映像配信など、次の50年を見据えて掲げたNEXT50と呼ばれる取り組みはそのまま継続される。

子供向けの職業体験プログラム「キッザニア」とコラボレーションしたout of kidzaniaも継続されるし、某エンジニアがSNSで発信したことで火が付いた「スーパーフォーミュラーメン選手権」や、富士スピードウェイに多数の縁日を出店したり花火を上げたりといった「スーパーフォーミュラ夏祭り」の開催も検討されているそうだ。

しかし、マーケティング面で今季もっとも大きなポイントとなるのは、「金曜日の活用」ということだろう。日本のメジャーなモータースポーツシリーズでは、リーマンショック、東日本大震災などを境に、主にコスト面を理由として金曜日のフリー走行が廃止もしくは縮小されてしまった。スーパーフォーミュラも例外ではなく、金曜日の走行は夕方の1回に制限されていた。
それが、今シーズンから金曜日に2回のフリー走行枠を設けて復活する。平日ということもあり、シリーズやチームを支える多くのビジネスパートナーを招き入れやすくなり、企業マッチングの場に活かすことができる。わざわざ休日を返上してまでサーキットで商談をしなくてもよくなったということだ。
また、将来エンジニアやものづくりの世界を目指す学生の校外学習として活用してもらうことや、サーキット周辺の学生を招待してスポーツの魅力を訴求することなど、次世代ファンの育成やリクルーティングに活かされることも、JRPは目論んでいる。休日にはできない、平日だからこそ実現可能な取り組みを創出し、シナジーが生み出されることを期待しているのだ。