1990年代になるとエアブラシが主流に
誰が最初に箱絵を描いたのかは定かでないが、派手な装飾を施すことを生きがいとしていたデコトラ野郎たちが、大きなキャンバスをもつ箱に絵を描こうと考えるのは、ある意味で自然なように感じる。その当時から、普通の運送屋でも箱に大きな文字を記したり、社名や屋号を刻んでいたからだ。
トラックの箱はいわゆる看板代わりとなっていたため、そこに好きな絵を描こうと思い立つのもおかしくないだろう。もちろん、社名などの文字と龍や虎などの箱絵では、放つインパクトがケタ違いとなる。そのため、目立つことを目標としていたデコトラ野郎たちのあいだでも浸透したのだ。
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そんなデコトラ野郎たちに愛されたモチーフは、龍や虎、そして波絵や歌麿美人画など。勇ましいものや勢いがあるもの、はたまた妖艶なもの。それらが好まれる傾向にあった。
1970年代や1980年代では力強さが魅力的な筆描きがメインだったが、1990年代になるとエアブラシが主流となり、繊細なる描写が好まれるようになった。そして、アイドルや女優などを描くデコトラが続出。人気のペインターも台頭し、デコトラ界を大いに盛り上げたのである。
もちろん、箱に絵を描くというスタイルそのものは、プライベートなデコトラを中心に現在でも引き継がれている。日本が誇るデコトラ文化は絶えることなく、伝統を継承しながら進化し続けているのである。