この記事をまとめると
■トラックドライバーの作業着の最新事情について解説
■腰痛対策としてサポートジャケットが注目されている
■事故に備えてエアバッグを装備したジャケットも存在
センサーで体の動きを検知する作業着も登場
暑い夏に工事現場などで重宝されているファン付き作業着。ちょっとしたアイディアなのだが、相応の冷却効果があるので急速に普及した。トラックドライバーも、荷物の積み降ろしをする際に使用している人が多くいるようである。同様に冷却効果がある作業着では、ベスト型のウェアにホースで冷水を送るといったシステムのものもある。これは、倉庫や工場などといった限定された場所で使用されるものだ。これらのウェアは、多くの現場作業員の労働環境改善に貢献している。
高度成長期に造られた東京タワーの建設現場では、命綱のないなかで作業を行なったなどといわれている。しかし、コンプライアンスが当たり前になった現代では、現場作業員がいかに安全、快適に業務を遂行できるかということがとても重要なのだ。ファン付き作業着や冷却ベストなどといったものが、開発、採用されるようになったのも当然のことだといえよう。
倉庫や工場の現場作業員とは異なり、トラックドライバーは長時間同じ姿勢で運転しているのだから、日常的に体へ大きな負担がかかっている。その状態で、さらに荷物の積み降ろしを行なうのであれば、腰痛対策や安全対策には十分配慮しなければならない。もしこれらを怠るようなことがあれば、怪我や事故に直結しかねないといえよう。
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腰痛対策として注目されているのは、サポートジャケットだ。これは、腰に負担の大きい「もち上げ動作」や「前かがみ姿勢」を、理想的な姿勢にサポートするものである。具体的には、腹筋や背筋が正常に機能するように支えることで、腰の負担を軽減するという仕組みになっている。ジャケット背面に左右独立したモーターを装備しているタイプなら、高感度センサーで体の動きを察知することで、自動的に必要な部分に最適な支援を行うこともできるのだ。
腰痛の問題よりも深刻なのは、トラックの荷台から作業者が転落するという事故だ。驚くことに、意外と多く発生しているという。厚生労働省などの調査によると、トラック運送事業で発生する労働災害の内、約7割が荷役作業中に発生しているのだそうだ。そのなかで約4割が荷台からの転落事故であるという。荷台から地面までは、多くが1m程度だからそれほど高いものではない。その気になれば、簡単に飛び降りられる。
しかし、荷物をもっていたり背面から落下したりすると、足から着地できずに頭部や脊椎に甚大なダメージを受けることがある。ヘルメットをかぶっていれば幾分防ぐことは可能だが、それでも大きな怪我をする場合が少なくない。そこで開発されたのが、頭部、背面、腰部にエアバッグを装備したジャケットである。
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このジャケットには加速度センサーが付いており、110cm(80cmで反応するタイプもある)以上落下すると0.2秒でエアバッグが膨張するようになっている。荷台までは100cm程度だが、加速度センサーは上半身に付いているので、着地するまでにエアバッグの展開は可能だ。作動用のガスはボンベ式なので、作動しても交換するだけで再使用が可能になる。これなら、万一荷台からの転落事故が起きても人的被害は最小限に抑えられる。
トラックの安全装置は車両メーカーの段階で装備されるので、比較的普及がスムースだといってよい。しかし、こういったトラックドライバーを守るウェアなどのグッズは、中堅・中小企業が独自に開発をしていることが多いので、運輸事業者などが積極的に情報を収集して導入しなければ、なかなか広がらないという問題があるのだ。
トラックドライバーの労働環境改善のためにも、運輸事業者のさらなる意識向上が期待されるところである。