「走れて美しくて……こんなクルマあるの?」 昭和のクルマ好きを歓喜させた「初代セリカ」はクルマも売り方も衝撃的だった (2/2ページ)

運転の楽しさを重視した「GTV」と「セリカLB」

 あとからGTVという、より走り重視の車種が追加になった。タイヤが偏平になり、乗り心地も硬めの印象だった。私の知人がGTVを手に入れ、乗せてもらったことがある。それは、のちの時代のクルマでいうと、R32スカイラインGT-Rが復活したときのように、運転席に座ったときから胸が高鳴り、DOHCエンジンを始動し、走りはじめたら夢心地にさせる凄みがあった。

 カリーナも走りが売りの車種であるから、GTという選択肢もあり、高性能車の雰囲気があったはずだが、外観は優美でありながら、運転に凄みを覚えさせるセリカGTVは、特別な1台という思いをいっそう募らせた。

 あとから、セリカ・リフトバック(LB)が追加になる。ファストバックのハッチバック車で、1964年に米国で生まれたフォード・マスタングを思わせる姿に憧れさせた。

 マスタングは1969年には車体が大柄になり、やや鈍重そうな印象をもたらした。もちろん、マッハワンという高性能車種はあったが、小柄で俊敏なスポーティ車という初代に比べ、別の価値観になっていた。

 そこに登場したセリカLBは、初代マスタングのクーペに通じる、身近でかつ爽快で、誰にも運転を楽しませてくれそうな魅力を放っていた。

 とはいえ、ハッチバックではなくクーペのほうのセリカこそ、独特で特別で、もつ喜びを心身にもたらす、他に類を見ないスペシャリティカー気分を全体で表現したクルマであった。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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