そういや横にズレてるけどなんで? 軽自動車のナンバーが真正面に位置していない理由 (2/2ページ)

装着角度の規定はあれど装着位置の規定はナシ

<法規制との関係>

 では、法律的にはどのような解釈になっているのだろうか。ナンバープレートの取り付けに関する法規制は、2016年2月に国土交通省が発表し、同年4月1日から施行された道路運送車両法の規定に基づいている。この規定では、ナンバープレートは「見やすく表示」することが求められており、たとえ透明であってもナンバープレートカバーの使用は禁止され、装着角度などが定められている。

 しかし、興味深いことに、ナンバープレートの装着位置に関しては具体的な記載がない。つまり、ラジエターやインタークーラーの冷却性を高めるためにプレートを左右どちらかにオフセットしても、角度と「見えやすい」という基本的な条件を満たしていれば、違反とはならないのである。

 この法的な柔軟性により、自動車メーカーはエンジン冷却効率の向上とデザイン性の両立を図ることが可能となっている。オフセットナンバーは車両性能の最適化を目指した工学的な解決策なのだ。

<オフセットナンバーの今後と電気自動車(EV)の影響>

 軽自動車におけるオフセットナンバーの採用は、現在のところ主に内燃機関車(ICE)に見られる傾向である。しかし、自動車業界全体が電動化に向かうなかで、この設計手法の将来はどうなるのだろうか。

 EVは、ICEと比較して冷却要件が大きく異なる。EVにはエンジン冷却用のラジエターが不要であり、バッテリーやモーターの冷却システムは異なる設計を採用している。そのため、一部のEVメーカーはフロントグリルを廃止し、空力特性を重視したデザインを採用している。

 この場合、ナンバープレートの配置はよりよい空力特性とデザイン上の選択となり、オフセット配置の必要性が薄れる可能性がある。実際、軽自動車EVの日産サクラと三菱eKクロス EVのナンバープレートは中央に配置されている。

 今後は、自動運転技術の発展に伴い、フロント部分にセンサーやカメラを配置する必要性が高まっている。これらの技術要素とナンバープレートの配置を両立させるため、新たな設計アプローチが必要となる可能性もある。

 オフセットナンバーは、デザイン的なカッコよさを目指したものに見えるかもしれない。しかし、その背景には車両性能の最適化と法規制への適合という重要な要素が存在している。今後、自動車技術の進化に伴い、ナンバープレートの配置はさらなる変化を遂げる可能性がある。EV時代においても、オフセットナンバーの概念は形を変えながら、車両デザインと性能の最適化に貢献し続けるかもしれない。


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