スペック以外のところで価値を得られるクルマに
いずれにしても、数字で比較すると、テスラ・モデルSのコスパが抜群であるように思えるのは事実。そのため、「テスラに追いついていないようでは商品力が足りない」という批判が出てくるのも理解できる。もし、ホンダがフラッグシップEVとしてこの価格帯でこうした性能のモデルを発表したならば……、そうした批判は適切といえるだろう。
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しかし、アフィーラワンはソニー・ホンダモビリティにより企画された製品であり、ブランドイメージとしてはSONYのイメージが強く、事実上「SONYカー」といえるのが実情だ。
そんなわけで、2025年3月17日までアフィーラワンの実車は、2025年1月にグランドオープンしたばかりの銀座ソニーパークに展示されている。はたしてアフィーラワンは単にコスパの悪いEVなのか、ソニーパークの屋上、青空の下で実車を見ながら考えてみた。
銀座ソニーパークに展示されているのは米国モデルをベースにした左ハンドル仕様。インテリアを覗き込むとインパネ全面がディスプレイで覆われている様子は、家電メーカーであるSONYカーらしい雰囲気。ステアリング形状がヨーク式なのはテスラを意識した要素といえそうだ。
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そんなアフィーラワンのスタイリングはとにかく独特だ。ドアのアウターハンドルがない点や、ルーフなどに目立つセンサーがボディ各所についている様は、ほかのフラッグシップEVが凡庸に見えてしまうほど「新しさ」を感じさせる。前後バンパー以外にキャラクターラインが目立たないスタイリングも、旧来の自動車メーカーではなく、SONYというブランドがデザインしたEVという雰囲気を強く感じさせる。
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思えば、ウォークマンのころからSONYの製品はスペックやコスパで比較すべきではないというイメージが強い印象があった。ウォークマンより電池のもちがよく、軽量な製品は他の家電メーカーから誕生していたが、コスパで競争している限り、ウォークマンのようなブランド価値を作り出すことはできなかったと記憶している。あのころは、SONYというブランドを所有することが満足度を生み出していた。
「SONYカー」であるアフィーラワンも、そうしたウォークマンの時代からのSONYブランドらしさを受け継いでいる、というのが実車を見ての正直な感想。スペックで比べるのではなく、このスタイリングとともに生活をしたいと感じるユーザーが購入するのであれば、航続距離や最高出力など些末な違いといえるのかもしれない。