WEB CARTOP | 独自の企画と情報でクルマを斬る自動車メディア

舶の揺れを研究をしてたらトラックの横転事故防止に役立つ技術ができた! 「横転限界速度検知システム」とは?

舶の揺れを研究をしてたらトラックの横転事故防止に役立つ技術ができた! 「横転限界速度検知システム」とは?

この記事をまとめると

■ジャパンモビリティショービズウィーク2024で気になる技術を発見

■東京海洋大学の渡邉 豊教授によるトラックの横転限界を検知するシステムだ

■会場では横転限界速度検知システムがRCカーで再現されていた

さまざまな場で評価されている

 トラックやトレーラーは、乗用車と比べると横転しやすい。それは重心(てこの原理でいう力点)が高く、ロールセンター(クルマがロールする際の中心となる点=支点)が低いため、ロールが大きくなりやすく、限界を超えると横転しやすいという、構造から起因する問題なのだ。

 それゆえに、トラックドライバーはトラックやトレーラーでカーブを曲がる際には、速度の調整や操舵の仕方で軌道をコントロールしながら曲がっていく。それでも、大型車やトレーラーの比率が増えたトラック輸送の現状では、横転事故は起こるたびに報道される重大事故のひとつだ。

 そんな横転事故の防止に役立ちそうな技術を、ジャパンモビリティショービズウィーク2024のスタートアップブースで見つけた。東京海洋大学の渡邉 豊教授は、船舶の揺れを研究してきたことで、揺れと重心の連携からヒントを得て三次元重心検知理論を考案。この理論は、船舶意外にもあらゆる乗り物に適用できるものであり、トラックの横転限界を検知するシステムを開発して、ブース出展していたのだ。

 それは横転限界速度検知システムをRCカーで再現した。走行中のロールなどを検知して重心位置などを推測し、横転限界の速度に到達するとドライバーに注意を促すのだ。

 狭いブースゆえにデモが禁止されていたため、RCカーは動かせず置いたままで、パネルと動画による展示に限定されてしまっていたが、その原理と仕組み、効果はほぼ理解できた。

 それは車体の重量やサスペンションのバネレートなどがわからない車体でも、重心に由来する動きの周波数を検知できれば、重心の高さや重心が安定していられる限界もわかる……というもの。それにより、横転する限界のコーナリング能力がわかり、限界を超えそうになった時点で警告したり、自動的に減速して速度を落とす制御を組み込めば、走行時の安全性は大きく改善できる。

 じつはこの三次元重心検知理論、米国政府が主催するESV国際会議2023(第27回自動車安全技術全世界大会)のなかで開催された、学生安全技術デザインコンペティションで優勝している。これはアジア初の快挙であり、自動車メーカーのエンジニアたちも評価しているものだ。

 また、2022年には計測展2022という展示会において、理工系大学研究室のコンペでも最優秀賞を獲得している。これはそれだけ技術的な完成度や現実的な導入のしやすさも評価されたものと考えていい。

 スーパーハイトワゴンなど、軽自動車でも横転しやすい車種は増えているが、大型トラックやトレーラーが横転事故を起こすと、その被害は重大なものとなりやすい。今後、トラックメーカーや架装メーカーもこうした技術を取り入れて、カーナビと連動させて車両制御に活かすなど、ドライバーの高齢化を踏まえてより一層安全性を高める工夫を盛り込んでほしいと思うのだ。

画像ギャラリー

WRITERS

モバイルバージョンを終了