詳細な情報が公開できないと「コンセプトカー」という表記になる
一方、量産イメージにつながるデザインではあるけれど、まだ量産仕様に向けてブラッシュアップしている途中であったりするショーモデルは、「コンセプトカー」と呼ばれることが多い。
ただし、「コンセプトカー」といっても量産車との距離感は異なっている。外観は出てきているけれど中身のないモックアップであったり、パワートレインの設定が明確になっていなかったりするなど、まさに夢のクルマはコンセプトカーと呼ばれている。
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はたまた詳細情報を出せないフェイズであったりすると、量産に近いイメージまで仕上がっていても、プロトタイプではなく「コンセプト」と名付けられることもある。
最近のケースでいえば、ホンダの「プレリュード」がわかりやすい。
2023年のジャパンモビリティショーでは「プレリュード コンセプト」となっていたが、2025年の大阪オートメッセなどに出展された際は「プレリュード プロトタイプ」となっていた。写真を並べてみるとわかるが、プロトタイプになるとナンバープレートの装着を考慮したデザインとなっており、まさに量産間近であると実感できる。
大阪オートメッセ2025で展示されていた「ホンダ・プレリュード プロトタイプ」画像はこちら
また、「コンセプトカー」のなかには、まったく量産を意識していないような、本当に夢を具現化したといえる場合もある。
そうしたショーカーについては、技術的アピール要素が強い場合は「テクノロジーショーケース」と表現することもあるし、スタイリングの提案がメインとなっている場合は「デザインスタディ」と呼ぶこともある。いずれにしても量産をそれほど考慮せず、あくまで初期アイディアをカタチにしたもので、まとめて「スタディモデル」と呼ぶこともある。
ダイハツ・ビジョンコペンのフロントスタイリング画像はこちら
またまた、ホンダ車を例にあげてしまうが、軽2シータースポーツカーとして一世を風靡した「S660」のデザインスタディといえるのが、2011年のショーカー「EV-STER」だったことは周知の事実。EV-STERの段階では電動パワートレインを想定していた。
その後、2013年にはエンジン車の「S660 コンセプト」として進化した。こちらは量産に近いイメージのコンセプトカーといえる。そして2015年の発表前にメディア向けにプロトタイプを公開した後、4月に発売開始となった。これこそがスタディモデル→コンセプトカー→プロトタイプの典型的な三段活用といえるだろう。
ホンダEV-STERのフロントスタイリング画像はこちら
あらためて整理すると、量産間近といえるのが「プロトタイプ」で、つくり手の技術やデザインをアピールするのが「スタディモデル」。「コンセプトカー」という括りのなかにはプロトタイプ寄りもあれば、スタディモデル寄りも存在しているので、そこを見極める必要がある。
ちなみに筆者が、コンセプトカーがスタディモデル寄りかどうか判断するための基準としているポイントのひとつがワイパーやバックミラー。デザインスタディ要素が強い際には、こうした機能部品は省かれていることが多い。逆に、デザイン重視のコンセプトカーに見えてもワイパーなどが備わっていると、量産化に向けた開発が進んでいると判断するヒントになるだろう。