
この記事をまとめると
■「Attack筑波2025」にヒョンデが自動車メーカー初となる参戦
■IONIQ 5 N TA Specが57秒446を記録しEV最速記録を更新した
■市販状態に空力デバイスや足まわりのモディファイを施した程度のマシンで記録を達成
注目イベント「Attack筑波」に自動車メーカー初の参戦
近年、その知名度を鰻登りに増している「Attack筑波」をご存じだろうか。10年以上の歴史を持つチューニングカーのタイムアタックイベント「Attack」のひとつで、茨城県の筑波サーキット2000を舞台とし、プライベーターからチューナーまでが同じ舞台でしのぎを削るというイベントである。
そして、2月15日に開催された「Attack筑波2025」にて、新たにひとつの歴史が刻まれた。ヒョンデが自ら持ち込んだ「IONIQ 5 N TA Spec」が、レーシングドライバーの谷口信輝選手のドライブにより57秒446というタイムをマーク。これまでテスラ・モデルS Plaidが持っていた59秒598という記録を2秒以上も塗り替えて筑波サーキット電気自動車最速の称号を手にしたのだ。
今回の記録を達成したマシン「IONIQ 5 N TA Spec」は、”TA”=タイムアタック が意味するように、完全にサーキット走行に的を絞った公道走行不可のマシン。2024年にはパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムで電動改造車部門の新記録を塗り替えるなど、すでに実績も十分な1台だ。
大型の空力デバイスが付与され、いかにもサーキットマシンといった風貌の「IONIQ 5 N TA Spec」だが、その仰々しいルックスとは裏腹に、エアロパーツ以外の点では市販モデルのIONIQ 5からさほど大幅な改造は施されていない。
具体的には、車体・モーターは市販車と同一のものを使用し、出力はソフトウェア・チューニングにより市販状態から37馬力アップの687馬力へと若干パワーアップ。サスペンションとブレーキがサーキット仕様のものに変更され、ヨコハマタイヤ製のスリックタイヤを履くほかは、サーキットアタックに必須のロールケージやバケットシートといったモディファイに留まる。主要部品が市販車とほぼ同一の状態でここまでのタイムを叩き出したという点でも、今回の記録は意義深い。
今回のタイムアタックを担当した谷口選手は、「他社EVで筑波サーキットのレコードを出したことがありますが、今回IONIQ 5 N TA Specに乗らせてもらって、これまでの記録を大きく塗り替えることができて非常に光栄です。軽量化されているとはいえ、2トンある車なので絶対的に重たいクルマです。それでも非常によく止まり、よく曲がります。パワーがあるのに制御が素晴らしく、曲がりや立ち上がりも安定しています。非常に不安感なく攻められるクルマでした」とコメントした。
今回のチャレンジ、そして土屋圭市氏とのコラボによる「IONIQ 5 N DK Edition」の発表など、ヒョンデはモータースポーツファン、ひいてはクルマ好きのなかで確実に存在感を増しつつある。
そもそも、自動車メーカーが自らAttack筑波に参戦するというのがAttack史上初の事態。記録達成も相まって、「高性能EVを世界の自動車文化に深く浸透させたい」というヒョンデ”N”ブランドの理念を結果で示したといえるだろう。