攻めた見た目に反して走りはフツー
インテリアもまたヴェロッサならではのエモーショナルかつエキゾチックな空間だ。インパネはマークIIそのものだが、スポーティでタイトな雰囲気を醸し出しつつ、全グレードにまったく窮屈さを感じさせないスポーツシートを備え、スポーティなドラポジを成立させている。これは頭上とウインドウとの距離が均一化されたことによる相対的効果とのこと。
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また、金属調リングの3連メーター、ガンメタリングデザインのエアアウトレットあたりはマークIIとはまったくの別物。クラシカルなスポーティテイストを演出していたのである。ちなみにシート地はイタリア服、当時のアルマーニを思わせる、ザックリとした織りとアルカンタラ素材、ダブルステッチを組み合わせていた。ワルを気取る伊達男の感性に訴えるインテリアだったということだ。
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エンジン&グレードのラインアップは下から「2.0」用の1G-FE 2リッターVV-i+4速AT、「25」用の160馬力、1JZ-FSE 2.5リッター200馬力+5速AT(16インチタイヤ)、その17インチタイヤ版の「V25」、そして最重級グレードとなる「VR25」1JZ-GTE、2.5リッターターボVVT-i、280馬力+5速AT/5速MT(17インチタイヤ)が揃っていた(駆動方式はFRとFour=4WD)。
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当時の筆者の試乗記を読み返せば、動的部分でマークIIと異なるのはサスペンションの味付けだけで、よりスポーティにチューニングしてあるだけなのだが、実際に走らせてみると、とくに「25」はマークIIとは別物だったのだ。ステアリングを切ったときの、過敏でない素直なターンインのスムースさ、より軽快かつスポーティ方向に熟成させたHインフィニティなしの前後ダブルウイッシュボーンサスペンションがもたらす軽快かつ強靱でしなやかなフットワークに感動できたものだった。
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エンジンにしても、BMW6気筒を開発目標にしていたと思われ、アクセルペダルをスッと踏んだときのレスポンスとタッチに優れていることに加え、トルキーでリニアな6気筒NAエンジンならではの回転フィールは刺激まで演出され、高回転では快音を放ってくれたのである。
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ちなみに、ベースグレードの「2.0」は走りのまとまりはいいものの、走りのキレ味、ワルっぽさは皆無。これならマークIIでいいじゃん、という感じだ。「VR25」はターボエンジンのキャラクターが強く、マークIIのiR-Vとの違いが見つけにくいのが残念。
しかも、1JZ-GTEユニットの高回転での刺激性が薄く、美味しく使えるパワーバンドが3000回転~と狭かったのもイマイチ盛り上がれなかった要因だったのである(未試乗の5速MTなら別かも知れないが)。さらに乗り心地、走り全域の気もちよさ、狙ったラインをトレースしやすい素直なハンドリング特性といった魅力では16インチタイヤを履く「25」に軍配が上がると感じたのも本当だ。
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ただし、フットワークの「エキゾチック」さでは、日常域、一般路での乗り心地が多少犠牲になるにせよ、路面とのコンタクトがより確実で、グリップレベルの高いオン・ザ・レール感覚の走りを楽しませてくれる17インチタイヤを履く「V25」ということになるだろうか……というのが、当時の筆者の試乗リポートである。
そのリポートの最後には、「国産セダンには絶対にない甘く危険な香りもまた、男の本能をゾクゾクと刺激してくれるに違いない。ただし、ヴェロッサのセダンにしてワルなデザインを、家族、とくに女性陣が納得してくれるかは微妙。ならば、当時大流行のイタリアブランド服に倣い、彫刻的なイタリアンデザインのクルマ、と説明するのがいいかも知れない」とある。結果、個性強すぎデザインのセダンゆえか、1代限りの短命で、2004年に生産終了してしまったのだった。