この記事をまとめると
■「混雑」と「渋滞」はどちらも道路上の車両の流れが滞っている状態を指す
■「混雑」よりもさらに速度が遅い状態のときに「渋滞」になる
■渋滞と混雑のない交通社会の実現に向けてさまざまな挑戦が続けられている
「混雑」と「渋滞」は違う
高速道路や一般道路を走行中、道路情報板などに「この先、混雑」や「この先、渋滞」といった表示を目にすることがある。一見、同じように思えるこのふたつの言葉。普段それらの違いなど気にもせずいたが、じつは明確な違いが存在するらしい。本記事ではその違いを解説しよう。
<混雑と渋滞の定義>
混雑と渋滞は、どちらも道路上の車両の流れが滞っている状態を指すが、その程度に違いがある。国家公安委員会の告示(2002年)によると、混雑は郊外の高速道路では時速60km以下、都市高速道路では時速40km以下、一般道路では時速20km以下の状態を指す。一方、渋滞はより深刻な状態を表し、高速道路では時速40km以下、都市高速道路では時速20km以下、一般道路では時速10km以下の状態とされている。
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つまり、渋滞は混雑よりもさらに速度が遅い状態を指すのである。この定義は道路の種類によって異なるため、注意が必要だ。たとえば、高速道路では混雑という表示はされず、基本的に渋滞のみが表示される。これは高速道路利用者が混乱しないようにするためである。
高速道路上の道路情報板の渋滞表示画像はこちら
<渋滞の発生メカニズムと原因>
渋滞が発生するメカニズムは、交通工学的に「ボトルネックにその区間の交通容量を上まわる交通流率の交通需要が到着したときに、当該区間の上流(クルマが走って来る側)に生じる低速の待ち車両列によって形成される交通状態」と定義されている(岩崎征人,『Civil Engineering Consultant VOL.268 July 2015』)。いい換えれば、道路の特定の区間(ボトルネック)に、その区間が処理できる以上の車両が流入することで渋滞が発生するのである。
一般道路での渋滞している様子画像はこちら
渋滞の主な原因としては、交通量の増加、道路インフラの不足、事故や道路工事、信号機の調整不足、運転者の不規則な運転行動などが挙げられる。とくに大型連休中は、多くの人が一斉に移動するため、特定の道路に車両が集中し渋滞が発生しやすくなる。
たとえば、首都高速道路、東名高速道路、中央自動車道、関越自動車道、常磐自動車道などの主要道路では、連休中に深刻な渋滞が発生することが多い。
高速道路上での渋滞画像はこちら
<渋滞と混雑への対策と将来展望>
渋滞や混雑を完全になくすことは難しいが、その影響を最小限に抑えるための対策は存在する。ハード面では、道路の拡張や立体交差化、バイパスの建設などが挙げられる。これにより、交通容量を増やし、渋滞や混雑の発生を抑制することができる。ソフト面では、交通量に応じた信号制御や、渋滞の発生しやすい場所への交通警察官の配置などが有効である。
交差点内に配置された交通警察官画像はこちら
また、各ドライバーが交通ルールを守り、マナーを向上させることも重要である。無理な運転を控え、ゆとりをもった運転を心掛けることで、渋滞や混雑の悪化を防ぐことができるのだ。
さらに、ITを活用した渋滞・混雑対策も進められている。AIを用いた交通流の分析・予測システムや、リアルタイムの交通情報を提供するアプリの開発などにより、渋滞や混雑を回避するルートの選択が可能となりつつある。将来的には、自動運転技術の普及により、車両の最適制御が実現し、渋滞や混雑が大幅に緩和されることが期待されている。
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渋滞と混雑は、ドライバーにとって大きなストレスとなる。しかし、その発生メカニズムを理解し、適切な対策を講じることで、その影響を最小限に抑えることが可能となる。行政や企業による取り組みに加え、私たちひとりひとりが賢いドライバーとなるための努力を続けていくことが求められている。
渋滞と混雑のない、スムースで快適な交通社会の実現に向けて、今後もさまざまな挑戦が続けられていくだろう。