CES2025のヴァレオブースで垣間見た未来
とはいえ、SDVの開発には自動車メーカーが巨大化することが必須かといえば、そうとも限らないようだ。2025年1月、ラスベガスで開催されたCES(かつては家電ショーだったが、いまや世界最大のテックショー)においてフランス系メガサプライヤーのヴァレオは独自の車載OSとSDVエコシステムを展示していた。
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その前にヴァレオについて簡単にお伝えしよう。
ヴァレオは、ADAS、電動化などに強みをもつメガサプライヤーのひとつで、自動運転技術に欠かせないLiDARの量産化においては一日の長をみせる。世界初の自動運転レベル3を実現したホンダ・レジェンドにも同社のLiDARは採用されていた。身近なところでも、ADASに欠かせないカメラシステムなどを多くのメーカーに納入している。じつは、同社のADASを積んだクルマに乗っているというユーザーも少なくないはずだ。
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前述したように、SDVの目的を自動運転の機能アップにあるとすれば、自動車メーカーよりADAS関連のセンサーを開発しているサプライヤーのほうが車載OSの開発プレイヤーとして適切かもしれない。
ユーザーが魅力を感じるような機能を、ソフトウェアの進化によって追加するとして、大きな問題のひとつが、新機能が安全に動作することの確認作業となることは想像に難くない。
ヴァレオのSDVエコシステムとは、何十万パターンものシミュレーションによる確認作業から、実際のセンサーを使ったテスト、そして同社の車載OSを積んだ実車でのテストなどを一貫して実施するシステムなのだという。クラウドを利用することで、ソフトウェア開発とテスト部隊を世界中に分散することで、スピードやコスト面での効率化を図ることも狙っている。
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自動運転においては車両制御の確認も重要だが、少なくともセンシングに長けたサプライヤーが新機能の動作確認を行うというシステムを構築することは、自動車メーカーにとっても、またユーザーにおいてもメリットとなるだろう。
また、ヴァレオはバッテリーやeアクスル(モーター、インバーター)など電動化に関するサーマルマネージメント(熱管理)も得意としているが、こうした面においても、ソフトウェアをアップデートすることで航続距離を伸ばしたり、冷暖房の効果を向上させたりすることもSDVでは期待されている。
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もっとも、Androidスマホにおいてハードウェアを作るよりもソフトウェアやOSを握っているほうが優位なポジションになっていることを考えると、自動車メーカーとしては独自の車載OSを開発して、それぞれにSDVエコシステムを構築したいのだろうが、ヴァレオのようなメガサプライヤーが車載OSやアップデートなどを統合的に担当するという未来もありえるのかもしれない。