車道外走行に逆走も当たり前のインドじゃ「エンジン音」も安全装備!?  無音のBEV普及は歩行者にとって恐怖だった

この記事をまとめると

■インド・デリーのあちこちにBEV二輪車とBEV三輪車のため充電施設が整備されていた

■燃料代の高値安定によりインドではBEV二輪車とBEV三輪車が激増している

■カオスな交通状況のインドで無音のBEVが増えると危険な状況に遭遇しやすくなりそうだ

インドにBEVの充電施設が激増中

 2023年にインドの首都デリーを訪れたときにはまだ「もの珍しい」存在にも見えたBEV(バッテリー電気自動車)の充電施設。しかし、2025年に再び訪れると、街のあちこちに距離を置かずに充電施設が整備されていた。ただし、ここでいう充電施設は二輪車や三輪車のBEVに対応したもの。たいていは幹線道路脇にあり、まさに「ドライブスルー感覚」で充電することが可能となっている。

 あるとき、BEVリキシャ(三輪タクシー)が充電していたので、充電器のディスプレイを見ると、すでに充電時間が160分を超えていた。たいていは複数の充電器が用意されているのだが、それでも充電を待つ人がいることもあるが、そのような人たち同士で充電を待つ間に話をするなど、新たなコミュニティを充電施設が担っているようにも見えた。

 一般的なケーブルをつなげて充電するタイプのほか、脱着式バッテリーの交換ステーションの整備も進んでいた。QRコードを活用した無人タイプ(ケーブル充電タイプも同様)となっており、こちらも朝夕の通勤時間帯を中心に、バッテリー交換に訪れる二輪車などでにぎわっていた。

 駐車場にもバッテリー交換ステーションがあったので近寄ると、BEV三輪トラックが停まっていたのだが、その車両にはクルマ向けの小さめな鉛バッテリーサイズ3個分の走行用電池が搭載されていた。

 2023年に訪れたときも、燃料価格の高値安定が常態化しつつあり、ユーザーとしては燃料代節約から二輪車や三輪車への乗り換えが目立ち、BEV化が四輪車より進んでいるとの話を聞いたが、2025年も燃料価格の高値安定化が継続しているので、とくに庶民の足となると二輪車のBEV化に弾みがついているように見えた。

 ただし、四輪車の充電ステーションというものは残念ながら遭遇することができなかった。四輪車を所有することができるほど所得に余裕があるのだから、自宅に充電施設を設けているというケースもあるだろうが、二輪や三輪BEV用の充電施設ほどは充実していないように見えた。

 個人的にはデリーあたりでBEV化が進むと困ることがある。とくに二輪車は場所を選ばす、そして逆走車も当たり前のように走っている。ICE(内燃機関)車ならばエンジン音で背後から近寄っているのがわかり、早めによけることができる。そもそもインドでは、二輪や三輪、四輪を問わず運転中は絶えずクラクションを鳴らし、自分の存在を伝えるために鳴らしているのではないかと聞いたことがある。

 ただ、BEVだと無音なのでいきなり背後からクラクションを鳴らされることになるため、かなり驚いてしまう。日本ではスマホ(スマートフォン)を凝視したまま歩く人や、ヘッドフォンで音楽を聞きながら歩く人が多いが、着実にBEVが普及しているインド・デリー市内でそれをすれば、身の安全を考えるとかなり危険な行為といえる。

 日本では、歩行者は「交通弱者」として信号のない横断歩道を渡るときはクルマが停止して譲ってくれるなど、最優先してもらえるが、インドなどの新興国では、歩行者は二輪や三輪、四輪車を優先させなければならないといったような交通環境になっている。

 いまのようなデリー市内のカオス的な交通環境のなかでBEV化が進んだら……。充電施設が増えているなかで、新たな不安が筆者の脳裏をよぎった。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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