雪道で自在に操れる次期型4WDシステム!
次はモーター四駆の話。ホンダとしては初めてのモーター四駆が次期型ヴェゼルに搭載されるようだ。いままでメカ四駆(ペラシャフト四駆)を作り続けてきたボンダだが、あまり四駆が得意というイメージはなかった。しかし、その歴史を見ると1986年にはじめてビスカスカップリングの四駆を量産するが、それ以降はおおよそ7種類の四駆を開発している。まるで四駆のデパートのような感じだ。
![新型e:HEV 4WDシステムを搭載したヴェゼルのフロントスタイリング](https://cdn-webcartop.com/wp-content/uploads/2025/02/honda_winter_020920250045.jpg)
そもそもホンダの四駆に対する哲学は重量が重くならない軽くてシンプルなシステムを開発することだった。四駆を売りにするAUDIやSUBARUは重量も重くなり、燃費競争で不利になる。まずは燃費競争が近年のホンダの考えだったと私は感じていた。
しかし、まぼろしのNSX(V10エンジン+メカ四駆)を開発していたころから、2010年ごろにはレジェンドやNSXに採用したSH‐AWDを開発し、四駆で運動性能を高める研究も進められていた。そして今回、ついにHEVと相性のいいモーター四駆に行き着いたのだ。
実際のインプレッションの前にすこし考察が必要だ。単にモーター四駆を開発したわけではない。CESで発表したホンダZEROシリーズを見据えた将来の統合制御という大きなテーマがこのヴェゼルのモーター四駆の背景に存在する。発表資料では近い将来(ZEROシリーズを見据える)はバイワイヤー化(ブレーキやステアリング)が進むと、パワートレイン(モーター四駆含む)とブレーキ制御(VSAなど)とサスペンションを統合制御するシステムが必要となる。ZEROシリーズで発表した車載OS(アシモOS)が実現すると、各ユニットにソフトを組み込む従来の機能ごとの開発ではなく、運動性能領域のドメインには、非分散型のソフトウェアとCPUが統合されるはずだ。つまり、今回テストしたモーター四駆の次期ヴェゼルは、単に「メカ四駆からモーター四駆になりました」ではなく、ZEROシリーズの前奏曲(プリュード)なのかもしれない。
![新型e:HEV 4WDシステムを搭載したヴェゼルのリヤスタイリング](https://cdn-webcartop.com/wp-content/uploads/2025/02/honda_winter_020920250046.jpg)
次期型ヴェゼルは従来と同じ1.5リッターだが、ロングストロークとし、出力をアップしている。気になるモーターはフロントが約96kW、リヤモーターは50kW相当。トヨタのハイブリッドに使われるリヤモーターが30kWであるので、ヴェゼルが属するセグメントとしてはかなりのパフォーマンスだ。現行モデルとの違いはメカ四駆かモーター四駆かという違いと、エンジンの出力も異なっている。
また、前後に独立したモーターを使うので、トラクション・コントロールは2CH(チャンネル)で機能する。つまりフロントが滑っても、リヤタイヤには影響せず、リヤモーターでしっかりと駆動力を発揮できるのだ。メカ四駆はひとつのタイヤが滑ると、残りのタイヤにはトルクはかからなくなる。モーター四駆のポテンシャルと操縦性をワインディングで思い切り試すことにしよう。