ポルシェが本当に作りたかったのは911にあらず!? ケイマン&ボクスターこそが「夢のクルマ」だった (2/2ページ)

スポーツカーとして高い資質を備えるボクスター/ケイマン

ロードゴーイングカーとしての優れた本質

 911への憧れを生み出すのに、レースシーンでの大活躍をあげる方は少なくないでしょう。オーバーフェンダーや巨大なウイングをまといながらもコースのなかでは小兵扱いされがちな911が、強烈なライバルたちを尻目に走る姿はたしかに胸のすくものです。

 一方、ケイマン/ボクスターがレースシーンで印象が薄いのは、ワークス活動が数えるほどしかなく、プライベーターの参戦も911の陰に隠れてしまっているから、かもしれません。

 ですが、これはポルシェが意図してやっていること。ケイマン/ボクスターはあくまでロードゴーイングカーとしての先鋭化を進めているわけで、レースレギュレーションの隙間を狙うような開発は行われていないのです。簡単にいってしまえば、レースで勝たせようと思ったらケイマン/ボクスターのホイールベースを短くして、より運動性能を高めることも可能なはず。

 ですが、これをやると一般道での挙動がシビアとなり、電子制御デバイスでそれを補ってしまえば、ミッドシップ本来の楽しさが損なわれる恐れも生じるのです。

 ロードゴーイングカーに求められる資質を突き詰める手法は911もなんら変わるところはないはずですが、ケイマン/ボクスターは、そこに「ミッドシップスポーツの楽しさ」が色濃く反映されているのかと。

 すると、最高速やコーナリングGの高さといった表面的な数値ではなく、ヒューマンタッチな魅力が鮮明となるはず。言語化するのは困難ですが、こうしたケイマン/ボクスターの美点は決してレースの成績に左右されるものではないのです。

 高齢化の進んでいる日本で、911原理主義者は減少傾向にあると聞きます。いうまでもなく、911はいつでもポルシェの最高傑作なはずですが、そろそろケイマン/ボクスターだって殿堂入りしても不思議ではないでしょう。安かろう、遅かろうなんてほざいている外野は放っておいて、ポルシェ博士が夢見たマシンを手に入れるというのも一興ではないでしょうか。


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