タイヤにかかる輪重に応じて空気圧の指定値は変わる
ミニバンなどでは乗員数、商用車では積載量に応じて指定空気圧が変わるケースもある。これは乗員や積載量が多くなったことでタイヤが支えるべき重量が増えたことへの対応であり、物理法則として真っ当な指定といえる。
たとえば軽商用バンの人気モデル、スズキ・エブリイでは、軽積載時は前240kPa・後260kPaの指定値となっているが、荷物を多く積んだときには前280kPa・後350kPaに調整するように指定されている。
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輸入車の3列シートモデルなどでは、もっと細かく条件にあわせたタイヤ空気圧が指定されていることもある。いずれにしても、車両を支えているタイヤ(空気圧)は重量の変化に応じて適正に調整する必要があるということだ。
余談になるが、前後でタイヤサイズが異なるスポーツカーでは、前後で指定空気圧が違っているケースも珍しくない。
下に示しているのはホンダの初代NSX(後期型)の空気圧指定ステッカーだが、フロントが230kPaと標準的なのに対して、リヤは280kPaと乗用車としては極端に高い数値となっている。応急用タイヤも前後どちらに装着するかで空気圧の指定値が異なっているのは、軸重の違いにあわせた空気圧とすることの重要性を示しているといえるだろう。
ホンダNSX(初代、後期型)の空気圧指定ステッカー画像はこちら
最近のモデルでは、発表から5日で受注一時停止となったスズキ・ジムニーノマドのタイヤ空気圧は前後180kPaが指定値となっている。燃費重視の乗用車では250kPa前後の空気圧を指定することは珍しくないが、オフロード走行を考慮したジムニーでは比較的低めの空気圧が指定されていると理解できる。
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いずれにしても、タイヤ空気圧というのは安全に走るためには指定値を守ることが重要だ。しかしながら、タイヤ空気圧の指定値が積載量などによって変わるということは、状況に応じて調整することに意味があることを示しているともいえる。
安全性を考えると極端に空気圧を変えてしまうのはNGといえるが、クローズドコースなどにおいて10kPa単位で調整することで走り味の変化を楽しむというのも奥深い趣味となるだろう。
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そうはいっても、自動車メーカーはタイヤの指定空気圧においてウェルバランスとなるようサスペンションやブレーキ、電子制御をセッティングしているものであり、公道を走る際にはタイヤ空気圧が指定値になるよう調整することが基本中の基本であることは留意しておきたい。