ただの灯油を運ぶ商用トラックだったのに中古高騰! 趣味人にもカスタム派からも熱視線を浴びる旧車「サニトラ」とは (2/2ページ)

カスタムベースとしても大人気

■サニトラのスペックとラインアップ

 超ロングセラーとなった2代目サニトラ(後期)のスペックを見てみましょう。

ボディタイプ:トラック
ドア数:2ドア
乗員定員:2名
全長×全幅×全高(mm):3845(4140)×1495×1390
ホイールベース:2300(2530)mm
車両重量:720(730)kg
エンジン:A12型 直列4気筒OHV
総排気量:1171cc
燃料供給装置:電子制御式キャブレター(ECC)
最高出力:52馬力/5400rpm
最大トルク:8.5kgm/2800rpm
サスペンション形式:F・ストラット式
R・半楕円リーフスプリング式

※()内の数字はロングタイプ

 搭載されるA型エンジンは1966年に誕生した旧い設計にもかかわらず、その素性のよさやタフネスさでモデル期間のすべてに渡って採用され続けました。

 今は絶滅のキャブレター仕様で多少のクセはあるものの、どんな地域でも故障知らずでタフに活躍しています。シャーシや足まわりの設計も旧いものですが、商用車としてはそのシンプルさが功を奏して永く愛され続けました。

■サニトラの使い方、遊び方はいろいろ

 サニトラは、その長い販売期間によって広い世代に知られているということも大きな要因ですが、そのちょうどいいサイズ感や国内では希少なピックアップスタイル、タフなエンジン、軽量な車体などの要因が相まって、いろいろな仕事や遊びに活用されているという点も特徴です。

・仕事や趣味の運搬用として

 仕事用の活用で印象に残っているのは、灯油やガソリンの移動販売用車輌でしょう。昭和の時代はガソリンスタンドに行くと必ずといっていいほど見掛けたものです。今でも郊外の小さなスタンドでは現役で稼働しているサニトラを見掛けることがあります。

 また、自転車やオートバイを運送する用途でもよく見かけました。ショートボディでもアオリを開けば250ccくらいまで搭載できますし、ロングなら大排気量の車輌も積めます。

・サーファー御用達の時代もあった

 アメリカではエル・カミーノやハイラックスなどの大柄なピックアップがサーファーに好まれていましたが、日本ではそのサイズはもて余すため、サイズ的にちょうどいいサニトラがもてはやされていた時代がありました。

 ファッション性もおろそかにしないサーファーには、乗用車顔のピックアップはベストマッチだったようで、砂浜のある海岸では、荷台にサーフボードを斜めに積んだサニトラをよく見かけました。

・カスタムも楽しめる

 サニトラのカスタムが活発になったのは、そのサーファーたちが遊び始めたというのが一端にあるでしょう。

 カリフォルニアのテイストを日本にもち込んだ「ムーンアイズ」などのカスタムパーツを使って、商用車っぽくないカジュアルな仕上げにするスタイルが流行しました。

 またその一方で、ベースのサニーはツーリングカーレースで活躍していたという背景もあり、搭載されているA12型エンジンのチューニングが、競技志向の界隈で活発におこなわれていました。

 チューニングカーブームが盛り上がった1980年代中盤あたりでは、チューニングでパワーを上げたエンジンを軽量なサニトラのボディに搭載して、ゼロヨンや峠道を攻めるなど、走り系の遊びにもよく使われていました。

 ちなみに2代目のサニトラは、ワークスチームからラリーに参戦していたこともあったようです。

■そんなサニトラはリーズナブルに入手できる、ハズでしたが……

 サニトラが遊びグルマとして人気が高かった時代は、商用車として使われていた車輌が中古市場に多く流れてきたこともあって、かなりお安く入手できました。

 そのため、予算をドレスアップにまわしたり、チューニングで速さを求めたりとカスタムを楽しむベースとしてもってこいという扱いでした。

 しかし今の旧車ブームの影響は、とうとうサニトラにまでそのスポットを当てるに至ってしまったようです。それでも100万円台からと、ほかの人気の車種に比べたらリーズナブルな相場で留まっている部分もあります。

 しかし、走行距離が少なかったり、キレイに仕上げられた車輌では、300万円以上のプライスが付いている個体もあるようで、そうなると気軽なカスタムの対象ではなくなってしまいます。

 そんな風にだんだんと購入予算が上がっているサニトラですが、今でも国産車としては希少な乗用車ベースのピックアップスタイルをもつ車種なので、まだまだ刺さる人はいるでしょう。

 ほかとは違う車種に乗りたいという人は、改めて注目してみるのもいいんじゃないでしょうか。


往 機人 OU AYATO

エディター/ライター/デザイナー/カメラマン

愛車
スズキ・ジムニー(SJ30)※レストア中
趣味
釣り/食べ呑み歩き/道の駅巡りなど
好きな有名人
猪木 寛至(アントニオ猪木)/空海/マイケルジャクソン

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